車のねじはなぜ緩まない?緩み防止はどうすれば?

今回は、「車のねじはなぜ緩まない?」というテーマを取り上げようと思う。車に限らず何らかの装置にはボルトが使われており、この記事を読んでいるあなたもねじの緩みに悩まされた経験は多かれ少なかれあるのではないかと思う。そんな私も過去にボルト緩みには苦い経験を持ち、諸先輩方にこっぴどく怒られた経験を持つ1人である。エンジニアにとってこれら「宿命のテーマ」を読んでいただき、少しでもお役に立てれば幸いである。

 

ねじが緩んでしまう原因は?

 

基本的にねじが緩んでしまうとはどういったメカニズムなのか?
あなたはご存知だろうか?

37c60c

これは文献などで調べてもらえばわかると思いますが、
基本的にボルトというのはバネの一種だと考えたほうが良い。

ボルト=バネ

 

部品の締結に使われるボルトは、締め付けると
部材にボルト頭があたり、だんだんと固くなってくる。

 

これは、ねじの軸方向に進む力がボルト頭の座面に伝わり、
部材とボルト頭の座面の間で摩擦力が生じているからだ。

 

このとき、ボルトは弾性変形をしていると言える。

 

ボルトを増し締めしていくと、
ねじの軸方向へ進む力は強くなり、座面に働く摩擦力も
極限まで強くなっている。

 

この状態が、ボルトが締結されている状態と言える。
ボルトが締め込まれ、元に戻ろうとする力で締結される状態である。

 

このボルトが弾性変形を保っている状態こそが、
「バネ」と言われる所以なのだ。

 

なので、装置というのは、このバネで繋がれた
剛体と呼べるのである。

 

この認識を改めて理解して欲しい。

 

そこで、このボルトが”緩んでしまう”というメカニズムについて
考えてみよう。

 

ボルトが緩むという現象は、ボルトの締結機能が働かない状態
となっている。

 

実はこの要因は、根本的に以下2つのことが原因となっている。

1)ボルトの軸力が小さくなる
2)ボルトの軸力が解放される

 

1)のボルトの軸力が小さくなるについて説明する。
材料の変形には弾性域と塑性域がある。
弾性域とは部材が変形しても元の形状にもどる領域を指し、
塑性域とはその変形が元に戻らない領域を意味する。

 

ボルトの軸力が小さくなるとは、
ボルトが塑性域の状態に達し、一旦ねじの締付けを解放しても、
元に戻ろうとする力が弱まってしまう状態になることを言う。

 

例えば、ボルトを締めすぎると締結力が弱まってしまった!
という経験は、この原理に基づいている。

 

 

2)のボルトの軸力が解放されるについて説明する。
ボルトが元に戻ろうとする力によってボルトと部材に摩擦力が生じ、
締結力が生まれるのは、あくまでボルトと部材間に隙間が生じていない
関係の上で成り立つ。

 

ボルトと部材の間に隙間があれば、その距離が均一に保たれなくなり、
一瞬にしてバネ力が失われることになる。

 

軸力が解放されるとは、まさにこの”部材間の隙間”がもたらすことが要因となっている。
ボルト座面と部材の間に生じる摩擦力が原因で隙間が生じてしまうと、
バネ力が失われることを言う。

 

実際には、この2つの要因がボルトが緩んでしまうことに
起因していると筆者は解釈している。

 

例えば、自動車メーカーで、
エンジンや変速機内部の『絶対緩んではいけない』ボルト類は、
敢えて塑性域まで引っ張って締め付けるという設計法をしている。

 

これはさらに高度な設計で、
ボルトを塑性域まで引っ張り、隙間を生じさせない設計となっているだ。

 

もちろん、環境負荷に耐えうるボルトの強度を持たせた上での設計になる。
そうすることで、理論的にボルトは緩むことはない。

 

 

 

スプリングワッシャーは緩み防止に効果的?

 

一般的にボルトの緩み防止に”スプリングワッシャー”を使う場面は
多いのではないだろうか。

98791

私も過去に設計した装置には、
大体スプリングワッシャーを多様してきた。

 

ただ、これは諸説あって、
決して”ボルトの緩み防止”になっていないという事実がある。

 

結局のところ、ボルトが緩んでしまうのだ。

 

スプリングワッシャーは、一見、軸力を増しているように思えるが、
実は隙間を作っているとも言える。

 

先ほどのボルトが緩む要因の中で、
2番目の隙間を発生させる要因となってしまうのである。

 

厳密には、「軸力を増す力」と「隙間」の関係を計測しないと、
はっきりとは言えないが、

”緩み防止”としては、あまり効果的ではないと言えるだろう。

 

 

 

ボルトのサイズや材質を変えてみる

 

では、ボルトの緩み止め対策としては、どのような方法が
効果的か考えてみる。

 

これは私の経験則となるため、
賛否あると思うが、参考程度に読んで欲しい。

 

何事にも原因があって対策があるという原則に基づく。

まずはボルトが緩むという原因は、
先ほど述べた2つが挙げられる。

1)ボルトの軸力が小さくなる
2)ボルトの軸力が解放される

 

これらを総合すると、
負荷に対して、適正な摩擦力が発生していれば、
ボルトは緩むことはないとも言える。

 

あくまで、負荷に対する適正なボルトサイズが間違っていたり、
そもそもボルト自体の強度が足りない場合に
ボルト緩みという現象が起こると考えている。

 

また、このような現象が起こってしまった場合、
あまり大きな設計変更をできない場面が多いことも
私は経験している。

 

そこで、まず有効的な対策の1つに、
ボルト自体を変更してしまうという手段がある。

 

ボルトの強度区分を変えてしまうのだ。

 

例えば、
現在使われているボルトの強度区分を調べ、
それら区分が低い場合には、強度区分の高い
ボルトに変えてしまうのだ。

 

強度区分の高いボルトの代表的なものは、
クロムモリブデン鋼の焼き入れ焼き戻しされたSCM435
挙げられるだろう。

 

これは、工作機械などでよく使われるボルトになる。

 

ちなみに、同じ黒色でもクロゾメ処理(四三酸化鉄皮膜処理)もあるが、
そのボルトではないので注意して頂きたい。

 

四三酸化鉄皮膜処理というのは、
鉄の表面を錆びさせそれ以上、錆が進行しないようにする処理のことで、
SCM435もクロゾメ処理のボルトも見た目は黒色になる。

 

ボルトの強度区分を上げれば、
前述したバネの剛性が上がるので、
設計変更せずに、ボルト緩み防止になるのだ。

 

これは、過去の経験上、効果のある対策である。

 

また、それでも緩んでしまう場合は、
装置の負荷に対して摩擦力が足りないケースとなる。

 

摩擦力が足りないということは、
そもそも締結力が不足していることになるため、
ボルトサイズを上げる必要が出てくる。

 

こちらは設計変更が必要だが、
最小の変更で済むため、まだ被害最小となるだろう。

 

 

 

振動でボルトが緩むのか?

 

また振動でボルトが緩んでしまうというケースも
多いのではないだろうか?

 

この振動でボルトが緩んでしまう要因としては、

2)ボルトの軸力が解放される

が考えられる。

 

状況によっても変わるためはっきりとは言えないが、
振動によって、ボルト座面が削れ隙間が生じてしまうのである。

 

隙間が生じるとボルトの張力は解放されてしまうため、
ボルトが緩んできてしまうのだ。

 

振動はやっかいな現象の1つで、
震えが起きている現象を現物確認できない。

 

だが、先程から述べている要因から推測すると、
うまく説明がつくため、筆者はこう考える。

 

振動によって座面が削れてしまう

ボルトと座面のスキマが生じる

ボルトの張力が解放される

この場合の現象として、「振動でボルトが緩む」ことになる。

 

大手自動車メーカのトヨタでは、
板ワッシャーでは歪んでしまって駄目だと言う事で、
フランジ付きボルトへの統合を進めているみたいである。

 

基本ボルトの締結とは、部材同士の摩擦力となる。
その為には安定して強い軸力(張力)を派生させる事が大事となり、
更には、2点止め以上で回転力を発生させない事や
1点集中を避ける事が設計的に必要である。

 

そして、ボルト緩みの基本的な対策としては、

・ボルトの張力をアップさせる
・座面の硬度を上げる

これらが効果的だと筆者の経験上考えている。

 

 

関連記事

コメント

    • 貝瀬三春
    • 2017年 3月 09日

    ここで話されているのは、鉄系の材料だと思いますが、塑性変形領域まで軸力を上げたらあとは破断するだけに思いますが?

      • 元エンジニア
      • 2017年 3月 10日

      貝瀬さん、コメントありがとうございます。
      おっしゃられる通り、塑性変形領域まで軸力を上げたあとは破断します。自動車業界の例を示した内容は、その塑性領域を正確に把握し破断しない締結力でトルク管理をしているという例です。言わばミクロ的な視点で管理しているということです。弾性域から塑性域になるということはネジ自体がミクロな寸法で伸びているという判断です。そこに隙間が生じているということですね。自動車に限らず装置においてもネジの緩みは問題となっており、その現象、原因を一般論で正確に特定することは難しく、今回の記事では筆者の体験に基づく持論として書かせて頂きました。一例として読んで頂けると助かります。もし、貝瀬様の持論があるようでしたら、一度、このサイトに記事を投稿してみませんか?私も勉強させて下さい。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る