計算方法

ボルト強度計算 サイズと本数はどうやって決めるの?

みなさんはボルトの選定にどのくらい重きを置いているのでしょうか?この部品を取り付けるボルトのサイズはどれが適正か、何本が良いのかちゃんと証明することができるでしょうか?もしできないなら、これから紹介する計算方法を参考にしていただけたらと思います。

 

 

ボルトの強度計算は難しい?

 

ボルトの強度計算と聞くと、少し難しく聞こえるかもしれません。また、過去の設計がある場合、何も気にせず同じサイズの同じ本数で流用設計を行い、まったくボルトの強度計算をしないケースもあると思います。

 

確かに過去の実績は一番の証明でありますから、その設計で問題がなければ、同じでもほぼ問題は起こらないでしょう。でもそれは、決して良い習慣ではありません。ボルトなんて所詮止まればいいよ、と思っているなら、設計者としてはまだまだひよっ子だということです。

 

設計者ならば、ボルト1本まで理由をもって選定してほしいものです。そこで、ボルトを選定するにあたり、いったいどこに気を付けて、どんな計算をすれば良いのか私の経験をもとに紹介していきます。

 

 

力(負荷)の大きさと向きを整理する

 

まず、ボルトの強度計算に必要なもの、それは、
・ボルトに掛かる負荷
・ボルトの保証荷重
これらの情報が必要となります。

 

ボルトにいったいどのくらいの力(大きさと方向)が加わるのか、また、それらの力が加わった時に、ボルト1本あたりどこまで耐えられるのか、保証荷重をもとに判断しないといけません。まずは、今ある条件の力、負荷(大きさと方向)を整理しましょう。

 

引っ張りなのか、せん断なのか、モーメント荷重なのか、部品と力の作用を絵で書いて、正確に把握してください。

 

例えば、こんな感じです。

bolt03

 

 

この絵が何かを理解する必要はありませんが、こんな感じで絵にすると、力の向きと大きさを把握しやすくなると思います。

 

 

ボルトの保証荷重を確認する

 

次に、ボルト自体の保証荷重を整理します。

bolt01

 

 

これは、ボルトの強度区分が12.9の場合の保証荷重の値となります。保証荷重は、ボルトが受ける力の方向によって異なります。

 

せん断強さの場合、ボルトの保証荷重は引張り強さの60~70%程度になりますので注意しましょう。ここで、一般的によく使われる鉄の引張り強さを紹介します。

bolt02s
こういったよく使う鉄の物理的性質はあらかじめ調べてまとめておくと便利です。

 

 

サイズと本数を実際に計算してみる

 

では、実際に計算例をご紹介します。かなり、実践的な計算なのでそのまま使えると思います。

 

 

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
例題  締結ボルトの安全率とせん断方向の強度計算
※従来の記事がわかりづらいので、計算例を変更しました。
/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 

 

私が実際に工作機械の設計で使っていた計算例です。

bolt_kei01

まずは、自分の作成した関係図より条件を整理します。私の場合、M16のボルトを半径R0.16mで16本使った場合の計算例となっています。M16の保証荷重を152,000Nとし、モーメント荷重をドリル加工時の負荷で計算しています。モーメントはみなさん荷重条件に合わせて計算してみて下さい。

bolt_kei02

ここで、ボルト1本あたりにかかる負荷を求めています。1本あたりに4977Nという計算結果となっています。

 

 

bolt_kei03a

このボルト1本あたりの負荷に対してどのくらい安全率があるのかをボルトの保証荷重より、計算します。30倍あるという結果です。安全率が3倍という基準を設けて、問題ないと判断しています。

 

 

bolt_kei04a

次に、せん断方向の強度計算です。この計算では、せん断強さσは引っ張り強さの60%として計算しています。M16の場合、152,000÷157×0.6 = 580N/mm^2

 

 

bolt_kei05a

上記式でせん断強さに関する安全率は18倍となり、基準となる3倍を上回っているので、問題ないと判断しています。

 

以上がボルト強度計算となります。ボルト1本あたりの負荷およびせん断方向の強度計算で安全率を求め、選定したボルトサイズが強度的に問題ないか判断している計算となります。

 

※読者様より、いろいろなご指摘ありがとうございました。
 

 

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コメント

    • 池澤 敦志
    • 2015年 8月 01日

    大変、勉強になりましたありがとうございます。
    もしこの他にトルクとか電気kw(減速機選定)などの計算方法を
    掲載されていましたら教えていただきたいです。
    よろしくお願いいたします。

      • 元エンジニア
      • 2015年 8月 01日

      この記事が池澤さんのお役に立てて何よりです。
      ご要望のあったトルク計算や減速機選定などの記事を
      さっそく書いてみようと思います。
      ご意見ありがとうございました。

    • 2015年 10月 04日

    老婆心ながら,

     一般的によく使われる鉄の引張り強さを紹介します

    の所の表引張強さの単位 ,kg/mm^2 ではなく,MPa (N/mm^2) だと思いますが.

      • 元エンジニア
      • 2015年 10月 09日

      辻様、ご指摘ありがとうございます。
      本文中にある画像を修正いたしました。助かりました。
      また、ここまで注意深く読んで頂き誠にありがとうございます。
      今後共、みなさまのお役に立てる記事作成を心がけますので、
      また、お立ち寄り下さい。
      ご意見ありがとうございました。

    • 通りすがり
    • 2015年 10月 26日

    ねじを締めつけて取り付けた場合には、ねじを締めつけた力を考慮する必要があることを何処かに注記頂いた方が良いと思います。

      • 元エンジニア
      • 2015年 11月 01日

      通りすがりさん、コメントありがとうございます。
      確かにねじの締め付け力は重要ですよね。部品によってはトルク管理も必要となります。
      ただ、この記事では、ボルトのサイズや本数を決めるための計算方法を記事としました。
      計算上は負荷トルクに対して必要な断面積を算出しサイズを本数を決める計算です。
      締め付け力は入っていません。むしろ規定トルクで締め付けることが前提条件というのが
      省略されています。実際問題、設計段階で締め付けトルクが足りるかな?を考えていません。
      締め付けトルクがきちんと伝わる部材(鋼材)が前提条件という意味でもあります。
      なので、締め付け力を考慮すべき部材に関してはまた別の記事にしようと思います。
      ご指摘ありがとうございました。

    • 掘口
    • 2015年 11月 24日

    いつも勉強させていただいております。

    もしよろしければ他の2例
    「ねじ山のせん断荷重」「ねじへのせん断荷重」の
    ボルトのサイズ、本数の計算方法を教えていただけないでしょうか。

    よろしくお願いいたします。

      • 元エンジニア
      • 2015年 11月 30日

      堀口様、コメントありがとうございます。ご返信が遅れてしまい申し訳ありません。
      ねじのせん断荷重の計算方法ということですが、おっしゃる通り私の記事、分かりづらいですね。
      昔書いた記事を今読み返すと分かりづらいことに気がつきました。記事の計算例部分を書き直しました。
      再度、ご確認してもらえたらと思います。ご指摘ありがとうございました。

    • 内村
    • 2016年 12月 12日

    突然ですみません。
    コメントを参照していましたところ、安全率が3あるのでOKとの事ですが、
    ボルトの計算上安全率3というのはどこから(出典など)来ているのでしょうか?
    よろしくお願いいたします。

      • 元エンジニア
      • 2016年 12月 13日

      内村さん、コメントありがとうございます。
      ボルト強度計算の安全率ですが、”一般的な基準”というものはありません。
      安全率というのは、その企業が持つノウハウです。
      また、その安全率というものは使用目的、場面によって変わるものだと思ってます。

      例えば、記事の例ですと、DDモーターの取り付けボルトの計算となり、
      正逆転が頻繁に起こり、切削負荷がかかりますので、30倍ほどの計算となっています。
      一般的な静的部品の取り付けであれば、3倍あれば経年変化にも耐えうるものという
      経験値から設けているものです。これは他人(他社)が決めることではなく、
      あくまで自分たちが導き出す値なので、”一般的な基準”はないということになります。
      当然、安全率は大きいことに越したことはないのですが、大きくすることで装置が大きくなってしまいますよね。
      意外とこれまでのボルトサイズをリストアップしてみると、感覚的に安全率を導き出すことができるかもしれません。
      ご回答になったでしょうか?よろしくお願いします。

    • たけし
    • 2017年 8月 31日

    勉強になります。ありがとうございます。

    質問があります。
    引張荷重についての強度計算で、ボルトを引きちぎる力として、
    ・ボルトを締め付ける際に発生する軸力(締付トルクから軸力を算出)
    ・外力(ボルトを引き抜こうとする力)
    が挙げられるかと思いますが、他の方のHPの設計方法を見ても
    締付トルクによる軸力については触れられていないのですが、
    実際は考慮した上で安全率をクリアできているか確認する必要があるのですよね?

    以上、よろしくお願いいたします。

      • 元エンジニア
      • 2017年 9月 06日

      たけし様
      コメントいただきありがとうございます。
      ”ボルトの締結”ではなく、”ボルトを引きちぎる力”を知りたいということでよろしいでしょうか?
      ちょっと状況が把握できないので、答えが難しいです。
      もう少し具体的なお話であれば、見えてくるものがあるかもしれません。
      もし可能であれば、池田金属という商社に問い合わせてみるといかがでしょうか?
      http://www.ikekin.co.jp/index.html
      私はこの商社のセミナーを受けたことがあるのですが、かなりボルトの研究をされているので、
      ご質問のことについても、何かヒントをもらえるのではないでしょうか。
      お役に立てずに申し訳ありません。

    • カロテン
    • 2018年 5月 09日

    ネジの勉強をしていたところ、こちらの記事へ流れつき、色々と勉強させて頂きました。
    今後も拝見させて頂きます。

    計算例について教えてください。
    ボルトへの荷重計算でトルクによる荷重をボルトの本数で割っていますが、
    例えばバカ穴取付の場合、穴位置のばらつきによってどこか1~2本のボルトに荷重が集中することは無いのでしょうか。
    それとも、それも加味した上での安全率ということなのでしょうか。

    設計の本などでもこちらの計算例と同様に計算されているのですが、その点だけがずっと気になっています。

    以上、よろしくお願い致します。

      • ありぞう
      • 2018年 5月 20日

      カロテンさん

      コメントいただきありがとうございます。
      ボルトの荷重計算についてのご質問ですが、計算は集中荷重ではありませんね。
      均等に分散した場合の計算例になります。

      設計上はどうしても物理的にバカ穴になってしまいますが、
      計算上は均等に荷重がかかった場合で良いと思います。

      ボルトを規定トルクで締結したにもかかわらず、
      途中でバカ穴のすきまでズレてしまうと確かに集中荷重になりますが、
      その(ズレてしまう)時点で締結力が足りないということで集中荷重ではなく、
      締結力(締結トルク)の不足の問題となります。

      仮に締結力が足りていれば、同じ状態(バカ穴すきま)を保てているので、
      集中荷重の問題は軽視できるのではないかと思います。

      また材料が弱く、締結部が削れ締結力が開放されてしまった場合も、
      同じく締結力の問題(材料の弱さ)ですので、ボルト荷重の問題ではないと考えられます。

      以上が見解となります。よろしくお願いします。

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