計算方法

工作機械のリニアガイド選定ってどうしてるの?選定過程と計算ツールの紹介!

機械設計を行うとき、リニアガイドを採用する場面は多々出てくると思います。リニアガイドを選定するときは、必ず寿命計算を行いますが、はっきりいって難しい計算式がたくさん出てくるので大変ですよね。最近では各メーカから簡易的な選定ツールが使えるようになっています。そこで、今回は、それら選定ツールの役割と工作機械のリニアガイドの選定過程について詳しく解説しようと思います。工作機械に限らずすべてのリニアガイドに精通するものがありますので、興味のある方はご覧下さい。

リニアガイド選定計算に必要な情報

 
どんな部品でも選定計算自体は、いくら計算式が難しくても一度理解してしまえばあとは簡単です。問題は、その計算結果に現実性を持たせることになるので、どのような値を条件として与えるのかという部分が重要になります。
 
条件設定にはいくつか種類があって、1つは機械的に決まっている条件(仕様)、2つ目に今仮に与える普遍的な条件、3つ目に過去の経験値から決められた条件があります。

1つ目:機械的に決まっている条件(仕様)
2つ目:今仮に与える普遍的な条件
3つ目:過去の経験値から決められた条件

 

まずは、物理的におさまる寸法や動かしたい速度、加速度などをできるだけ具体的に設計を終わらせ、1つ目の条件設定を終わらせておきましょう。具体的にどのような項目が挙げられるのか、例を下記に示しますので、参考にしてください。

・移動軸方向
・早送り速度
・早送り最大加速度
・早送り平均加速度
・切削送り速度
・切削送り平均加速度
・スライドベアリング数
・レール長さ
・送りねじピッチ
・送りねじ長さ
・減速比

最後のほうにある”送りねじ”とはボールねじのことです。

 

2つ目の条件としては、重量が挙げられます。移動体の重量は詳細設計を進めていく中で大きく変わってしまうことがあります。そのため、リニアガイド選定の条件としてはあらかじめマージンを含んだ重量としておくと良いと思います。

 

3つ目の条件ですが、これは”ベアリング掛かる負荷”や”摩擦係数”などがあります。工作機械の場合、リニアガイドのベアリングにかかる負荷の中で一番大きいものとしては、”切削力”になります。

 

切削にも種類分けをして、重切削、中切削、軽切削に分けて考えます。負荷として大きいのはもちろん重切削になります。それぞれの負荷の条件は、仕様にも影響してきますが、経験値による部分もあります。

 

また、摩擦係数も同じで、どの係数が真値かという議論よりも、これまでどの係数値を使って計算してきたのかという部分がクローズアップされることになりますので、3つ目の条件として捕らえると良いと思います。

・切削力
・摺動部の摩擦係数
・荷重係数
・目標となる寿命時間

これら条件を事前に用意しておくと、後の計算のときにスムーズに進めることができます。私は下図のように一覧表としてまとめていました。

また、移動体の動作パターンも考えておかなければなりません。どのような速度で動いて、負荷はどのくらいかかって、それをどのくらいの時間繰り返すのかといったパターンになります。

 

こういった運転パターンは、製品の寿命計算にも影響してきますので、しっかり決めておく必要があります。参考までに運転パターンをまとめた資料を載せておきます。

以上が選定計算に必要な事前情報となります。機械系の構想を進めながらこれら情報をまとめる必要がありますので、慣れないうちは少し大変かもしれません。それでは次にこれらの情報をもとに選定ツールにて計算してみましょう。

NSK選定ツールを使った寿命計算

 
一昔前まではリニアガイドの選定といえば、以下のルーチンで行っていました。

①自分で手計算
  ↓
②選定用の資料作成
  ↓
③メーカに計算依頼
  ↓
④計算結果と自分の結果を比較し、
 メーカの回答が正しいか検討
  ↓
⑤結果が満足できなければ条件変更し、
 再度、メーカに計算依頼

自分自身で手計算できなければ、メーカから帰ってきた計算結果が正しいものかどうかも確認できないので、まずは自分で計算が当たり前でした。それは今も昔も変わることはなく必要なんですが、選定ツールを使うことで、何が役立つのかというと④から⑤の回数を減らすことができるということです。

 

選定ツールは、自分の計算に大体合っているのか”当たり”を付ける役割として、活用して下さい。勘違いしてほしくないのは、③と④の変わりを選定ツールで補おうとしてしまうことです。どのメーカが提供する選定ツールも簡易版であり、詳細な条件で計算する場合は、最終的に計算資料をもとに計算をお願いするスタイルがもっとも確実となります。あくまで選定ツールは”当たりをつける役割”なのです。

 

そこをきちんと理解したうえで、早速選定ツールを使ってみたいと思います。

 

今回は、NSKが提供している選定ツールを使います。
下記のアドレスからWEBサイトを開いてください。
 
■NSK直動製品選定ツール
http://www.nsk.com/jp/services/onlinetools/

まずはトップページの画面です。ここで、直動製品選定ツールをクリックします。

NSKリニアガイドをクリックします。

かんたん選定をクリックします。

同意するをクリックします。

空欄に先ほど与えた条件を入力します。単位を間違えないように注意します。

「重心位置」「レールスパン」「ベアリングスパン」任意入力のチェックボックスにレ点を入れます。入力後、かんたん選定ボタンを押します。

空欄に値を入力します。入力後、下の寿命計算のボタンを押します。

すると、条件に見合ったリニアガイドの一覧が表示されます。

いかがでしたか?あらかじめ必要な条件事項をまとめていたので、あとは入力するだけで楽チンだったと思います。画像に入力した数値は今回適当な値となっています。

選定結果を検証

 
ここからが本番なのですが、選定ツールを使った結果を本当に信じてよいのかという検証に入ります。どんな製品を選定するときも共通して言えることですが、メーカからの回答を鵜呑みにせず、自分の計算結果と照らし合わせて合っているかどうかを確認する癖を身につけると良いと思います。

 

今回のリニアガイドの選定の場合、答えを先に言うと、

・選定ツールの結果:#25~#35

・メーカからの回答:#45

・自分の計算結果:#45

※#は番手の意味です

メーカからの回答だと番手が上がっている回答になっています。この違いはどこにあるのでしょうか?

 

工作機械で使うリニアガイドは大きさも大きいですし、何より値段もセットで10万クラスですし、納期もかかります。そうやすやすとやり直しができないんですね。そういった理由があるので、先に説明した①~⑤のルーチンで進めていく必要があるのです。

 

話を戻しますが、簡易計算とメーカからの回答にはいくつか条件が違っています。

 

1つは、運転パターンです。運転パターンは動作状態、負荷をそれぞれ細かく与えていますが、簡易計算ではそれらは一部でしか計算に入れていません。当然、移動距離が短くなり、動きも単調なものになってしまいます。特に速度や移動距離、負荷や負荷時間はもろに寿命計算に利いてきますので、簡易計算ではカバーできない部分となっているのでしょう。

 

2つ目に、寿命計算の中で使われる係数の違いが考えられます。具体的にはわかりませんが、安全率をどれだけみるかで使われる値が変わります。値が1と2では2倍違いますからね。

 

最後にリニアガイドの変位量の問題があります。工作機械は変位基準で設計がされており、いくら頑丈そうに見えても、変位量が大きいと構造自体を見直す必要があります。

 

そういった意味でもリニアガイドにおいても、許容できる変位量があるため、いくら目標となる寿命時間をクリアできる番手でも変位量が大きいと、さらに番手を上げる必要が出てきます。

 

最後にもう1つ、過去の実績があります。計算よりも信憑性がもっとも高いものは、実績です。計算でいくら1番手下げることができる結果が出たとしても、それを実行するには、相当の勇気が必要ですよね。

 

これらの理由から、簡易計算結果を鵜呑みに出来ないことがわかります。今回の事例はすでに答えが出ていて、後追いで選定ツールを使っているのですが、まったくの新規で同じような計算をした場合は、怖くて本当に鵜呑みにできません。間違ったときに上司に報告もできませんからね。

 

なので、あなたも実際に選定ツールを使用するときは”当たりを付ける役割”だということを忘れないで下さい。失敗して後悔するのはあなた自身ですよ。ちなみに、これはNSKだろうがTHKだろうが、IKOだろうが、どのメーカでも同じことが言えます。

 

ただ、だからといって選定ツールが使えないという意味ではなく、ちゃんと役割を持って使えば、役に立ちますし、何より、リニアガイドを選定する過程を理解するためにも何度も使って使いこなせるようになれると良いと思います。

計算がどうあれ、絶対に使ってはいけない使い方

最後にもう1つだけ、お伝えしたいことがあります。それは、計算がどうあれ絶対に使ってはいけない使い方があるのです。それは、「ベアリング(1個)固定でレール移動」といった逆使いのパターンです。

 

通常は、「レール固定でベアリング移動」ですよね。それの逆使いパターンです。

イメージ沸きますか?こんな感じです。


絵を逆さにしただけなので、わかりづらいですよね。要は、ベアリングが固定でレールが移動するタイプの使い方です。

 

この使い方はどこかで見たことがあり、普通に使われていそうなんですが、リニアガイドが破損する確立が非常に高くなります。レール2本使いだとしても、キツイ条件だと思います。レールがオーバーハングしてモーメントがハンパなくきついんですよ。

 

私は過去にこういった設計をしてしまって失敗してるんですが、そのときメーカ側はこういった使い方は推奨していないと言い切り私も使い方に問題がないとは押し切れませんでした。寿命計算はもちろんOKだったんですけどね。

 

メーカ側の保証うんぬんという話になったときどうしても分が悪いので、絶対にこういった使い方はしないようにして下さい。

 

今回の記事は以上となります。今回ご紹介した選定方法は別に工作機械限定というわけではありません。一般的な使い方においてもこの手順を行えば、手堅くミスなく選定することができます。私は今でもこの手順で行っています。なので、手堅く行きたい人はぜひ、実践してみてください。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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