評価・解析

振動問題で固有値を避ける設計とは?振動解析事例を紹介

機械設計をしていく上で”振動問題”は切っても切れない縁であると言えます。単なる物を収納するだけの箱を設計するならば関係のない話ですが、装置に駆動源がある場合は、そこに必ず振動といった問題が付いてくるからです。そこで今回は工作機械の振動事象「加工面がビビる」という事象を例に、捉え方や解決アプローチ、解決手段を紹介していきます。さぁ、行きますよ。





 
装置には振動があっても問題とならないケースもあります。例えば、精度を求めない装置や振動自体あっても重要な部位とは縁切りされており振動が減衰され小さくなるケースなどです。要は振動が装置の機能を損なわない場合は、例え振動があっても大きな問題になりません。問題に繋がらない場合は振動問題をシビアに考えなくても良いでしょう。実際にそういった業界の装置はたくさんあります。

 

ですが、工作機械といった変位量基準の装置であったり、位置決め精度が数ミクロンやナノ単位を求められる装置に関してはこの振動問題は必ずと言っていいほどクローズアップされることになります。(こういったシビアな業界で働くと、他の業界に入っても楽ですね。余談です^^)

では、実際に振動にシビアとされる工作機械の振動問題に対するアプローチを見ていきましょう。

 

 

加工面がビビるとは?びびり現象から紐解く原因とアプローチ

 
「加工面がビビる」とは工作機械の仕上げ面精度の検査工程でよく見られる光景ですが、ワークの加工面が縞模様になってきれいな仕上げ面になっていない現象を意味します。フルバックで面加工では見られず、エンドミルという工具で側面加工の場合に見られる現象です。

この加工面がビビるという現象は切削負荷に対して主軸(スピンドル)剛性や主軸を受けるヘッド部剛性が負けていることを意味します。切削負荷に対して主軸が弱いので震えることで跡が残ってしまっているようなイメージです。XYのどちらかの方向で跡が残るということは、主軸がジグザグな動きで進行していることが想像できますよね。このジグザグな動きを”モード”と呼び、このモードは各周波数帯域で異なった動きとなるのです。

 

問題を特定し対策を講じるためには、たくさんの重なった見えない要素を1つ1つ分解してどの要素が一番悪さをしているのかを特定する必要があります。原因が特定できないと、対策が的外れになってしまい問題を解決できません。そこで、問題が起きたら以下の3つを確認するようにしてください。これは、今回のびびり現象だけに限らず、振動問題全般で共通して確認すべき最低限のステップとなります。

・主軸がどの回転数のときにビビりが発生しているのか
・その回転数で結果と一致するモードであるか
・その他の駆動源の回転数と共振していないか

モードは通常、3D-CADなどを使った解析ソフトによって確認することができますが、解析ソフトが無い場合でもXYZの3方向の振動の大きさを計測し比べれば、大体どの方向に大きく振動しているのかをイメージすることができると思います。

最新の振動計であれば、変位、速度、加速度、FFTモードとあるので、その構造物の固有値と振幅の大きい方向がわかります。

出典:RION

ただ、構造体がどのようなモードになっているかだけは、解析ソフトじゃないと知る術がありません。振動問題を解決するためには、こういったステップでアプローチしていかないと、的確な対策を打つことは難しいでしょう。

 




 

振動問題を根本的に直すには”固有値を避ける”設計にあり

 
ここまで、振動の原因を特定するために現象を具体化し、それら問題に対してどのようにアプローチしていくのかを解説してきました。ただ漠然と剛性を上げるのではなく、きちんと問題となる周波数やモード、大きさ、共振回避などを把握した上で”どの方向に”対策するのかが重要となってきます。

 

こういった”問題を特定する作業”を疎(おろそか)かにして、そのまま的外れな対策してしまい、結果、解決できないといったケースを見受けますが、それは問題特定の甘さが引き起こしているという結果ということになります。そうならないためにも、しっかり上記3ステップは把握しておきましょう。

 

振動の現象やアプローチについて把握できたかと思いますが、もう1つ覚えておくべきことがあります。それが”構造体が持つ固有値”となります。構造体はその形や重さによって非常に振動しやすい周波数帯域を持っているのです。

なぜこの固有値が重要なことなのかというと、固有値は周波数のみの話ではなく、モードと対になっているものです。

 

例えば、

30Hzでは、横に揺れるモード
50Hzでは、縦に揺れるモード
70Hzでは、ねじれるモード

このように、周波数とモードがセットになっているのです。

(参考例)

結果(現実)と照らし合わせて、固有値が悪さを起こしているのか、全体的に剛性不足が問題なのかなどを特定する、判断するためには、このような周波数とモードがセットになっている情報を使って、区別する必要が出てきます。

それ以外の方法を私が知らないだけかもしれませんが・・・
 
この部分を間違ってしまうとどうなるかというと、

・実は他のベアリング剛性が弱いことが原因にも関わらず、間違って固有値の対策をしてしまった 結果、鋳物の型を修正したにも関わらず、振動が解決できない

・逆に固有振動が問題であるにも関わらず、ベアリング剛性を上げてしまった 結果、モード自体全く変化なく残り続けるためビビリ現象が残る

このように、トラブルが起きて設計を責められて、時間に追われて対策を施したにも関わらず、まだ解決に至らず、自分の評価がダダ下がり状態になってしまうのです。このような痛い経験をした人は、これまでのステップの大切さが理解できるのではないでしょうか。
 
なので、振動問題をシビアに扱う業界にとって、いかにこの固有値を設計段階で避けるための設計ノウハウを持つことが、技術力につながることになるのです。こういった企業では3次元の解析ソフトは必須であると言えますね。

 




 

振動解析のポイント!何をどう見る?

 
固有値はすべての構造体が持っているもので、それがウィークポイントになります。ただ、もっと注意すべきことは、このウィークポイントに追い打ちをかける要因が存在します。

それが”共振”です。

 

共振とは、回転体が持つ振動が他の振動と重なることによって、振動が増幅されてしまうことを意味します。今回の事例で言えば、主軸の回転数がその共振の根源となります。モータ単体の回転数だけでなく、回転体すべての周波数が共振のもとになります。

モータの回転数が1000rpmならば16.7Hzですし、2000rpmでは33.3Hzとなります。

 

また、ボールねじやプーリ、ギア歯車や減速機などすべてが対象となります。

振動を避ける設計のポイントは、構造体が持つ固有値と回転体の周波数を避ける設計となり、これら両方を照らし合わせ、構造体と回転体の周波数が同じところにあればどちらかを逃がす必要があるのです。逃がすというのは、周波数をズラすということです。
 
仮に構造体の固有振動が17Hzで回転体の周波数が16.7Hzならばアウトということですね。さらに、固有振動は1つではないので、次の固有振動が35Hzならば、回転体の周波数33.3Hzもアウトになります。

 

こうやって、ある程度の周波数帯域をすべて見渡して共振をさけた設計が振動解析の真髄となるのです。これが意外と難しいんですね。

ただ、どうしてもすべての周波数帯域で避けることができない場合はどうするのかということなんですが、私の経験上、優先すべきは”低周波帯域を避ける”ことに重点を置いた方が良いと思います。

 

10Hzや20Hz、30Hzという周波数は構造体が持つ固有振動の中でも回避しづらい部分だからです。この部分は、構造体を変更しなければこの固有振動は避けることができません。これは、経験されると分かりますが、おそらく言いきれるでしょう。

また、100Hz以上であれば、電気的に回避できる可能性が残っています。こういった理由から、”低周波帯域を避ける”ことに全力を注ぐ設計とすべきだと考えています。

 

 

以上が振動解析の解決のヒントになるよう事例を交えた紹介になります。いかがでしたでしょうか?
 
私自身、これまで振動解析に携わり、痛い目を経験してきた経緯からこのような記事を紹介しましたが、これもまた賛否あると思います。私の考え方、アプローチがすべてではないので、あなたの直面している何かヒントになればと思います。この記事を読まれた方、コメント頂けると今後の励みになります。よろしくお願いします。
 




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