公差とは?寸法公差や幾何公差を本質から学ぶ

私も学生時代に「公差って何だろう?」と疑問に思っていたことを思い出します。今では仕事柄、それこそ何千枚、何万枚という図面を書いていますので、当たり前になってしまいましたが、新米だったころはいつも図面を書くたびに手が止まってしまいました。そんな新米エンジニアに向けて、私の公差に対する考えを記事にしました。

 

目次

機械設計における公差とは?

 

公差とは、ものの”仕上がり寸法幅”を意味します。

 

例えば、10mmという仕上がり寸法に対して、「9.9mm~10.1mm」の範囲で仕上げるといった幅となります。

 

この「仕上がり幅」を設定しないといけない理由は、
金属の加工において、10mmという寸法を仕上げられないからです。

 

10mmとは、10.0かもしれないし、10.00かもしれません。

10.000かもしれませんね。

この違い、分かりますか?

 

10mmとは、9.6mm~10.4mmまでを指します。
四捨五入すると、そうですよね。

 

10.0mmとは、9.96mm~10.04mmまでを指します。
小数点が付くことで小数点以下の数値を守らないといけないからですね。

 

10.00mmとは、9.996mm~10.004mmまでを指します。
この小数点以下の桁数によって、同じ10mmでも意味合いが異なるわけです。

 

 

一方、部品を製作するためには、いろいろな加工法を使う必要があります。

 

例えば、板金の折り曲げだけで作る部品や
切削加工で作る部品、溶接を必要とする部品など
物の形状によって加工法を選びますよね。

 

この”加工法”にも当然ながら、仕上がり寸法幅があります。

 

「折り曲げ加工」や「溶接加工」では、ミクロン台(1/1000㍉)の精度は出ないのです。

 

また、寸法幅は加工法だけの要素だけなく、”一般公差”というものもあります。

 

これは物の大きさによって決められる公差範囲で、
「何も仕上がり寸法の指示がなければ、この範囲になりますよ」的な意味合いを持つものです。

 

例えば、2000mmの長さのものを
ミクロン台(1/1000㍉)で加工することは難しいです。

 

arrow_black仕上げたい寸法公差
arrow_black加工法による寸法誤差
arrow_black一般公差による誤差

 

これらを念頭に置いて、設計者は装置として必要となる”精度”を
守らなければならないのです。

 

 

寸法公差や幾何公差とは?

 

金属を加工で仕上げるためには、
”仕上がり寸法幅”が必要だということをご紹介しました。

 

この仕上がり寸法幅とは長さ方向だけでなく、
半径方向にももちろん必要なものです。

 

例えば、ベアリングのような精度の良い部品には
必ず相手部品となるシャフトにも精度が要求されます。

 

せっかく精度ものを使っても、相手部品の精度が出ていなければ、
バランスが悪く精度ものを使っている意味がありませんからね。

 

例えばシャフトの寸法公差はh7が基本となっています。

h7とは0を基準に数十ミクロンの公差範囲を半径方向で必要だという意味です。

 

とても厳しいはめあい公差になります。

 

寸法の精度だけでなく、形状の精度も重要ですよね。

シャフト1つを見ても、長さ方向や半径方向の精度が必要ですが、
形の歪(いびつ)さを保つ必要が出てきます。

 

シャフトの外径を見れば、丸く見えると思いますが、
拡大するとそれは真円ではありません。

 

歪な円になっているのです。

 

この歪さが大きくなると、円の形が崩れてしまうので、
形状的な制限を設ける(図面指示)必要があります。

 

今回の例えで言えば、「真円度」となります。
こういったものの形や位置・姿勢を決める公差を
幾何公差」といいます。

 

他にもよく使われる幾何公差としては、

右と左の軸中心を合わせるための「同軸度公差」や
丸物の振れを制限するための「振れ公差」、
板と板を突き合わせて直角を制限する「直角度公差」など
さまざまな幾何公差があります。

 

 

寸法公差や幾何公差と加工誤差との関係は?

 

ここまでは、学生時代の図面の授業などで学べる一般的な知識ですね。

「寸法公差や幾何公差」

 

では、実際に図面を書く上でこれら知識を持ってしても
正しい図面が書けるのかと言うことなんですね。

 

ここで言う正しい図面とは、机上の空論になっていないか
ということです。

 

答えは、”No”なんですが、
理由は、簡単で加工法による仕上がり精度を知らないからなんです。

 

h5板金製作で出せる仕上がり精度はどのくらいか分かりますか?

h5溶接で出せる仕上がり精度はどのくらいか分かりますか?

h5切削加工でどんな加工ができて、どのくらいの精度が出せるかわかりますか?

h5研磨はどれだけの精度で仕上がるかわかりますか?

 

どういったものがどういった製作法で作られ、どのくらいの精度を実現できるのか

 

これを知らないと図面を書いても”正しい図面”とは言えないのです。
机上の空論となるわけです。

 

まさしくココが学生と社会人の違いで
知識として寸法公差や幾何公差を知っていてもダメなんですね。

 

学生時代は先生に注意されてるだけで終わりですが、
社会人になると、上司に怒られるだけでは済みませんよね。(つд⊂)

 

 

”仕上がり寸法”はどうやって決める?

 

実際のところ、製作法とそれらが出せる精度を調べないと
わからないわけですが、

ここでは、私の経験上で、製作法と精度をまとめました。
工作機械の業界と繊維業界を経験していますので、
大きく外れてはいないと思います。

 

 

板金加工   0.5~3mm程度
溶接加工   2、3mm程度
レーザー加工 0.1mm程度
切削加工   5ミクロン程度
研削加工   数ミクロン

 

 

加工法によって出せる精度の大体の目安となります。

 

なるべく具体的な数値を書こうと思い具体性を持たせたつもりですが、
あくまで目安となりますので、保証値ではありません。

 

ただ、このぐらいの精度で出せることを知っていれば、
設計的にもあらかじめトラブルを防ぐことができますし、

あなたが書く図面もそれなりに正しい図面となることでしょう。

 

お付き合いしている加工業者によっては、多少目安が違ってきますので、
できるだけ加工業者に自分で足を運んで、話を聞いて
この加工法と精度をまとめると良いと思います。

 

 

私も長年、自分の足でこれら加工精度を確認してきましたので。

 

また、今回の記事でご紹介した寸法公差や幾何公差については、
私も会社で常に机の上に置いている便利な本があります。

 

point機械設計便覧

 

設計者にとって手放せない本であることは間違いありません。
もし、まだ持っていないなら今すぐ購入するといいでしょう。
 

 

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この記事を書いた人

福井県生まれ。地元工業大学大学院修士課程を卒業。大学卒業後は、工作機械メーカーの開発部に配属になり、10年間、設計、組立、加工、基礎評価、検査について携わり、その経験をもとにしたメカ設計のツボWEBサイトを立ち上げ。

現在は転職し、衛星、医療、産業機械、繊維機械など多くの設計に携わって、機械設計のノウハウを皆様に役立ててもらう情報発信メディアの構築を行っています。

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