金属材料の記号表記の意味を知ってるかい?代表18種の材質すべて解説

普段何気に見ている金属材料の記号表記。SS400とかS45Cとかアルファベットと数字で組み合わさった記号を丸ごと覚えていると思います。一種の単語のようなものですね。今回は、記号の意味を理解するのと同時に材料選定について実例と一緒に紹介します。
目次

金属材料の記号の意味を知らなくてもいいのでは?

金属材料には記号があり、細かな意味がそこにはあります。

・SS400
・S35C
・S45C-D
・SUS430
・SUS304TP-S

機械屋ならば普段目にするごく当たり前の記号ですが、この記号意味を細かく理解している人はどのくらいいますでしょうか。この記号の意味を知らなくても実際に設計はできますし、問題はないと思いますが、それはあくまで過去の流用設計ができるという意味になります。

エンジニアの本来の達成感は、真っ白なキャンパスに線を引き、それらを具現化させ、装置として完成させることです。そのためには、やはりこの記号の意味をある程度理解していく必要があると私は考えます。何より、設計としての経験が浅いうちは、とにかくやり直しが発生し、仕事の時間が足りない状況が続くと思います。やり直しの発生する理由の1つでもありますので、ここはしっかり押さえておきましょう。

聞くよりまずは慣れろ!よく使われる代表的な材料18選

左の文字列から解説します。あえて専門用語は使いませんのでご安心を!メモは私の覚書です。関連記事は当サイトの関連記事へのリンクです。

■SS400
S:Steel
S:Structure
400:最低引張り強さ数値
 
[メモ]
溶接を使った製罐品の部品製作に適している
ブロック形状で安価に仕上げたい時に使う材料
ただ、重量は重くなる
 
[関連記事]
SS400とS45Cの使い分けとは?
 

■SS400D
S:Steel
S:Structure
400:最低引張り強さ数値
D:Drawing materials
 
[メモ]
上記SS400にDという記号が付いている
Dとは引き抜き材という意味
SS400(黒皮材)とSS400D(ミガキ鋼材)
規格寸法に揃えられた部材
表で見える場所に引き抜き材を使う
 

■S35C
S:Steel
35:0.35%の炭素含有量
C:Carbon
 
[メモ]
炭素鋼の一般的な部材
S35CとS45C、S50Cはよく使う
 
[関連記事]
SS400とS45Cの使い分けとは?
 

■S45C
S:Steel
45:0.45%の炭素含有量
C:Carbon
 
[メモ]
S35Cとの使い分けはその会社に依る
S45Cを一般的に使う会社なのかどうか
 
[関連記事]
SS400とS45Cの使い分けとは?
 

■S45C-D
S:Steel
45:0.45%の炭素含有量
C:Carbon
D:Drawing materials
 
[メモ]
SS400Dの使い方と同じく
規格寸法に揃えられた部材
安価に仕上げたいときに選定する
 
[関連記事]
SS400とS45Cの使い分けとは?
 

■S50C
S:Steel
50:0.50%の炭素含有量
C:Carbon
 
[メモ]
丸物ではなく箱もの形状の部品で用いる
 
[関連記事]
SS400とS45Cの使い分けとは?
 

■SUS430
(フェライト系/マルテンサイト系ステンレス鋼)
S:Steel
U:Use
S:Stainless
430:フェライト系
 
[メモ]
SUS材の中でも値段が安い
※価格は業者の流通による
鉄に比べ耐食性に強い
中国製造など価格を抑えたい時に用いる
耐腐食系で304より劣る
 

■SUS304
(オーステナイト系ステンレス鋼)
S:Steel
U:Use
S:Stainless
430:オーステナイト系
 
[メモ]
SUS材の中でも値段が高い
※価格は業者の流通による
鉄に比べ耐食性に強い
耐腐食系で430より強い
 

■SUS304(2B)
S:Steel
U:Use
S:Stainless
304:オーステナイト系
2B:仕上がりに光沢のある状態
 
[メモ]
鏡面仕上げよりも劣る
素材のまま使いたい場合に選択
 

■SUS304(HL)
S:Steel
U:Use
S:Stainless
304:オーステナイト系
HL:表面に髪の毛のような研磨目がある状態
 
[メモ]
うち(勤務先)では2B、HL、鏡面仕上げをよく使う
 

■SUS304TP-S(ex.φ20xt5.0)
S:Steel
U:Use
S:Stainless
304:オーステナイト系
TP-S:シームレス管(継ぎ目なし)
 
[メモ]
パイプの場合、素材としてシームレス管があればそちらを使う
 

■SCM440
(クロムモリブデン鋼)
S:Steel(鋼)
C:Cr(クロム)
M:Mo(モリブデン)
4:配合種類番号
40:炭素量
 
[メモ]
鉄に比べ硬度が固めの材料
シャフトなど摺動がある部品の材料とする
焼き入れがセット
 

■SWP-B(ばね)
SWP:ピアノ線
B:種類
 
[メモ]
SWP-Aと特性はほぼ同じ
線径に若干の違いがある
 
[関連記事]
圧縮コイルばねの計算とは?バネの設計方法
 

■A5052(板材)
A:Aluminium
5:5000系アルミニウム合金
0:制定順位
52:アルミの純度:99.52%
 
[メモ]
一般的なアルミ部品に用いる
 

■A5056(丸材)
A:Aluminium
5:5000系アルミニウム合金
0:制定順位
56:アルミの純度:99.56%
 
[メモ]
一般的なアルミ部品に用いる
52、56は同じ材料として認識
 

■A6063
A:Aluminium
6:6000系アルミニウム合金
0:制定順位
63:アルミの純度:99.63%
 
[メモ]
5000系に比べ高価
耐食性に優れる
 

■SPCC
S:Steel
P:Plate
C:Cold
C:Commercial
 
[メモ]
板金材料で用いる
板厚は規格がある
中国材料と規格が異なる
 
[関連記事]
SS400とSPCC(SPHC)の選定にお困りの方はこちら
 

■SPHC
S:Steel
P:Plate
C:Hot
C:Commercial
 
[メモ]
板金材料で用いる
板厚は規格がある
中国材料と規格が異なる
板厚規格でSPCCと異なる
 
[関連記事]
SS400とSPCC(SPHC)の選定にお困りの方はこちら

誰でもできる!材料選定の4ステップ

材料選定というのは、適当ではなく必ず理由があって決まるものです。設計初心者はその理由の決め方が訓練されていないため、前のものをそのまま意味を考えず流用してしまいがちです。それも全然悪いことではなく、数をこなせば自然と理由を考えるようになります。
 
どうやって材料を決めるのか全くわからない初心者向けに4つのステップを紹介していきます。
STEP
部品の機能や形状で決める

形状によって作れる材料がある程度絞られます

STEP
部品加工とコストで使い分ける

安く作るのか、精度重視かを見極めます

STEP
材料特性で使い分ける

どうしてもこの材料じゃないと機能を満たせないかを判断します

STEP
加工業者が持つ材料で使い分ける

加工業者が持つ材料を優先して設計を進めていく

それでは詳しく見ていきましょう。

部品の機能や形状で決める

大概は設計する部品の機能で決まります。

・固さが必要な部品なのか
・剛性が必要なのか
・焼きが必要か
・箱ものなのか
・中実か中空か

などなど。数を上げれば切りがなく、ケースバイケースですので、機能や形状が決まって、材料を何にするかが決まります。俗に言う、要求仕様ですね。ここを間違わないように設計者は注意して進めます。

部品加工とコストで使い分ける

部品の機能や形状が決まると、その形状をどのように具現化させるのかが決まります。同じ形状のものでもアプローチがいくつかありますからね。
 
加工品で製作するのか
板金で製作するのか
製罐品で製作するのか

などなど。最終的にはどの加工方法で安く作れるのかとの天秤になるかと思います。

材料特性で使い分ける

部品の機能や形状から大体の加工方法が決まっても、まだ具体的な材料が選定されたわけではありません。丸物形状を加工するにしてもS35Cなのか、S45Cなのかなど細かい部分が決まっていません。

板状形状でも、素材のままでいいのか、引き抜き材を使うのか、SUS430か304材を使うのかですね。最終的に、どの材料特性を選ぶのかが必要となってきます。なので、材料の記号の意味を大体把握しておく必要があります。

加工業者が持つ材料で使い分ける

とここまではある程度できますが、設計の熟練者になると、自分が取引している加工業者が持つ加工能力を考えるわけですね。
 
どのような加工機を持っていて、
どのような材料を在庫で持っていて、
どのような特殊な材料を使うことができるのか

ここまで把握できると、設計のやり直しが少なくなってきます。いろんな選択肢があると思いますが、最終的にはこの加工業者に依存してしまうのです。上記の4ステップを材料選定でチェックすれば、設計初心者の方も自ずと間違いが少なくなると思いますので、習慣化するようにしてみてください。
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この記事を書いた人

福井県生まれ。地元工業大学大学院修士課程を卒業。大学卒業後は、工作機械メーカーの開発部に配属になり、10年間、設計、組立、加工、基礎評価、検査について携わり、その経験をもとにしたメカ設計のツボWEBサイトを立ち上げ。

現在は転職し、衛星、医療、産業機械、繊維機械など多くの設計に携わって、機械設計のノウハウを皆様に役立ててもらう情報発信メディアの構築を行っています。

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