図面の書き方が劇的に変わる!初心者が心掛けたい12のルール

部品モデルを構想し終わったとき、次に図面作成に移ると思います。機械図面の書き方のルールは基本的に「JISにもとづく機械設計製図便覧」に記載されています。ですが、これまで何千枚、何万枚と図面を見ていると、どうやら抑えるべきポイントが抜けている人が多いように思います。そこで今回は一から学ぶと題して、初心者から中級者まで学べる製図のポイントを書いていこうと思います。
目次

部品の3面図展開を軽く考えていませんか?

2次元はもちろん、3次元設計を行っていても図面は書くと思います。3次元でモデルを作って2次元の図面に落とし込むときはカチッ、カチッ、カチッとマウスを数回クリックするだけで3面図展開ができるようになりました。そして、すぐに寸法線が引ける状態になっている。実はココに大きな落とし穴があるのだと私は考えています。

その昔、ドラフターを使って手書きで図面を書いていた時代がありました。ドラフターを知らない人もいるかもしれませんが、要は縦横スライドする定規を使って手書きで図面を書いていた時代です。そのときは、一から線を引いて書いていきます。最初の1本目の線を引くときの緊張感を今でも思い出します。

図面を書くときに大事なことは、1本目の線に意味を持たせるということです。意味を持たせるとき必ず人はその理由について考えます。

どの部品のどこの線なのか
なぜこの場所なのか
なぜこの正面図を選んだのか

そういったことをツールの進化によって考えなくても良くなってしまったという時代背景はあるとしても、この意識を忘れてしまってはいけないのだと感じています。

もし忘れてしまったのなら、3次元設計を一旦やめて、2次元設計に戻られることをおすすめします。

3面図の正面図って何?

3面図展開する重要性というのは、何となく感じてもらえたでしょうか。きちんと意味を持って配置させましょうねってことですね。では、3面図にはそれぞれどんな意味があるのかわかりますか?

正面図
側面図
上面図

まぁ、その名の通りですが、正面図を選ぶときにあなたはどんな基準で正面図を決めているでしょうか?

・3次元CADでモデルを作った正面を部品図の正面とした?
・たまたま開いた状態のモデルを正面とした?
・一番面積の広い面を正面図とした?

先ほどの解説にもあったとおり、必ず意味を持たせてください。たまたまとか、適当にではダメですよ。正面図は一番見せたい形状を正面図にするようにしましょう。図面を見る人がパッと目に入る場所ですぐに形が想像できる面です。正面図という役割は、ぱっと見て形状をわからせる面となるので、意識して配置してみてください。形状がわかる面なので、必然的に1つのビューに寸法が集中してしまいますよね。

こういったところを意識して3面図展開して寸法を入れていくだけでも、図面を読み取る人にとっては見やすい図面になります。またこれはドラフター時代の作業をすればするほど自然と身に付いていき、3次元ツールを使えばこの意識が薄れていきます。なので、定期的に2次元設計と3次元設計を行き来するといいのかなと思います。目的は1本の線に意味を持たせることです。

これら前提条件の上で、本題となる製図の抑えておきたい12個のポイントを紹介したいと思います。

現役エンジニアが機械図面を書くときに注意している12のルール

私が図面を書くときに普段意識していることを12のルールとして紹介していきます。当たり前なところが多々あると思いますが、1つでも気づきがあれば幸いです。

部品の3面図展開のルールを理解する

先にも書きましたが、3面図展開にはきちんと意味を持たせましょうということです。

どの部品のどこの線なのか
なぜこの場所なのか
なぜこの正面図を選んだのか

具体的には、正面図をどのように決めるのか?この1点だけだと思います。私個人的なルールとしては、正面図は一番見せたい形状を正面図にするが答えになります。その部品の形状が一目でわかる向きを正面図とします。そこを基準に側面図や正面図、詳細図や断面図が決まってくる感じです。

尺度を決める

部品図を作成する上で次に大事なことは、尺度です。用紙サイズごとに最大の尺度を見つけるように心がけましょう。基本的には以下のような手順でサイズを決めていきます。

1.実物大1:1で図枠に入るか
2.次に1:2で図枠に入るか
3.入るなら、2:3にできないか、入らないなら1:3にできないか
etc

ここでA4サイズを使う場合は、尺度は1:1です。A4で1:2の尺度で作図するのはNGです。一応JISには機械図面の尺度が決められています。ただ、それだとあまりにも大まかすぎるため参考程度にしか見ていません。

図番や名称、材質など図枠を記入する

図枠には必ず図番や部品名称を書く欄があると思います。その記入欄に必要事項を記載します。板厚や材質など素材情報を記載することで、仕上げ記号などを記載することが出来ます。

板金か加工品か仕上げや注記を書く

素材を決めた時点で、加工法も決まってくると思います。その時点でそれらの仕上げ記号を記載しましょう。板金であれば仕上げ記号は必要なくなりますし、加工品であれば一発か二発か、研磨仕上げかなどを決めていきます。また黒皮でよい部分も決めていきます。

全体寸法、大きい寸法から入れていく

寸法の入れ方は人それぞれだと思いますので、参考程度に読んでいただきたいです。私の場合だと、一番外の外寸から記載していきます。理由は、寸法として一番知りたい情報であり、抜けがあっては困る寸法であり、どの寸法よりも干渉が少ない寸法だからです。他の寸法はその外寸の内側に記載していく感じですね。そのルールをもって寸法を整えていくようにしています。

寸法を入れるときは、縦・横・高さの順番で

寸法を入れると画面に集中するあまり、1つのビューに視野を固定しやすいです。ですが1つのビューに固定してしまうと、寸法モレが多く発生してしまいます。私が気を付けていることは、「縦・横・高さ、あなたは誰?の順番」で寸法を引いていくということです。正面図や側面図、上面図を行ったり来たりで寸法を引いていきます。

何年経っても寸法モレがある人は、1つのビューずつ寸法を入れていく人が多いのではないでしょうか?思い付きでここに寸法入れてみたいな。これだと、どの部分のどこまで寸法が引かれているのかが頭の中で記録できません。そのため、寸法モレが発生しても不思議ではないのです。自分の中で心当たりがある方はぜひ「縦・横・高さ、あなたは誰?の順番」で寸法を引くように意識してみてはいかがでしょうか?

寸法をどのビューを基準に入れていくのか

寸法はできるだけ正面図に集中して記入していきましょう。これも一番パっと見でわかる特徴ある面を正面図としているので、寸法が必然的に集中しますよね。それとは別に加工屋さんへの配慮の意味もあります。

3面図の場合、ビューは少なくとも3つあります。加工屋さんは寸法が見つからないときに、他の2つのビューから探さないといけません。1つの部分の寸法を知りたいときに、右も左も、上も下も探さないといけないと大変です。

そのため、正面図を基準に寸法を記入していき、他の2つのビューに寸法を入れた方が分かりやすいなという場合に側面図や上面図に寸法を入れていくとよいでしょう!

2重寸法は括弧表示のルール

基本的に2重寸法と呼ばれるものは入れない方がいいです。というのは基本的なルールとしてご存じかと思います。2重寸法を公に許してしまうと、寸法に矛盾が生じてしまったり、寸法が多くなり見づらくなるからですね。

ですが、それら弊害がない上で、あえて括弧表示させて記入させてほしい場合もあります。

・全体寸法から引き算すればわかるが、計算量が多い場合
・左右対称に見えて、実は左右の寸法に違いがある場合

私はあえてこういった場合に、括弧寸法で2重寸法表記を入れるようにしています。

並列寸法表記のルール

並列に寸法を記入する場合の注意点として、寸法線が重ならないようにします。特に矢印が相向かいになったときは、黒丸を使ったりします。また、並列寸法の数が多い場合は、ピッチ表記で代表寸法のみ記入するようにしています。

形状内にできるだけ寸法を配置しない

これは寸法の多さによりけりなんですが、基本的には図形の外側に寸法を配置するようにしています。スペースに余裕があり、どこでも配置できるにも関わらず寸法を形状内に配置することはしないようにしましょう。理由としては、形状情報が見づらくなる、認識しづらくなるからです。これはあくまで基本ルールですので、絶対ではありません。実際に寸法の置き場所がないため形状内に寸法を配置することは多々あります。基本ルールとして理解してください。

穴ピッチを相手部品と比較する

これは面倒な作業ですが、必ず行うようにしています。キリ穴やザグリ穴、タップなど相手部品と組み合わせがある場合には、必ず相手図面のピッチも一緒に確認します。部品が実際に製作されてからピッチの間違いに気づくのを防ぐためです。これはどれだけ過去に痛い目にあったかどうかでやる、やらないは決まるのかなと思います。

製作や組み立てを想像しながら気づいたらモデルを修正する

作図は、単純に決められた図形に寸法を書いていき、寸法漏れがないかを注力すればいいのですが、設計者はこの作図の時点で最終チェックを行っていくべきだと思います。自分自身の最後の砦の時間になります。間違いや変更が見つかった場合にはここからモデルを変更して、図面にも反映させていきましょう。これは部品製作、組立を騒動できないと気づかない部分もあるため、しっかりイメージしましょう。

仮に上司の検図が通ったとしても、ミスが起こりケツを拭くのは自分自身ですから。

加工品の場合、表面粗さと幾何公差の数値とのバランスをチェックする

すべてのパターンに対して記事を書いてはいられないため、最後に表面粗さと幾何公差について解説していきます。
これ結構、若い子で理解していない子がいたので、参考にしてほしいです。基本的に表面粗さを示す加工記号(▽記号)と幾何公差は比例の関係にあります。理解しやすくするために極端な例で解説していきます。

■仕上げ記号が▽で平行度0.005は出せない
加工記号が▽1発の場合、表面粗さRyは100μmになります。その表面粗さ指示で平行度という幾何公差0.005は到底出ません

■仕上げ記号が▽▽ではめあい公差φ20h7は出せない
φ20のh7は+0.02~+0.041になります。▽▽2発の場合、表面粗さRyは25μmになります。そのためφ20h7の公差には入りません。

■直角度ABを0.05で出したいなら、表面粗さは▽▽▽3発で仕上げ面の指示を記入する
▽▽の仕上げだとRyで25μmなので、A面とB面の直角度を50μmで出すには不安があります。なので、3発を図面で指示しましょう。

まとめ

学校では教えてくれない図面の書き方を紹介しました。現役なのでそのまま明日から使えるルールになってはいると思います。各企業によってルールが違うと思いますので、自分のルールと比較しながら読んでもらえればいいのかなと思います。

図面は読み手(加工業者さん)がいて、業者さんのとの打ち合わせの中で細かな書き方などは決められます。図面表記とはそれら業者さんが理解できる表現が正解であって、それがJISと異なっていたとしてもそれが正解なのかもしれません。特にコメントなどはそういったことが顕著に表れます。

これから図面を書く人は、基本的なルールを理解した上で経験を積むことで、より成長のスピードが早くなりますし、常に今のルールを疑って確認してみることをおすすめします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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この記事を書いた人

福井県生まれ。地元工業大学大学院修士課程を卒業。大学卒業後は、工作機械メーカーの開発部に配属になり、10年間、設計、組立、加工、基礎評価、検査について携わり、その経験をもとにしたメカ設計のツボWEBサイトを立ち上げ。

現在は転職し、衛星、医療、産業機械、繊維機械など多くの設計に携わって、機械設計のノウハウを皆様に役立ててもらう情報発信メディアの構築を行っています。

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