エンジニアは設計するだけが仕事ではなく、社内でプレゼンテーションをする機会が多い職種の1つです。それは会社の商品をどのような形で誰に向けて開発を進めるのかを社内的に承認を得て進める必要があるからです。逆に言えば、設計はできるが、人前でプレゼンすることが苦手というエンジニアは1人前とは言えないでしょう。それだけプレゼンの能力はエンジニアにとって必須であると言えます。なぜなら答えの見えないもの(未来の自社製品)に対して相手に共感を得られなければならないからです。今回は、そのプレゼン資料の作成に関して、特に説得力のあるプレゼン資料の作り方について解説していきます。
説得力のあるプレゼン資料の作り方
あなたはプレゼン資料をどのように作られますでしょうか?
プレゼンといっても、難易度の段階があるのですが、商品を開発するにあたり、まずはどの方向性で商品を開発するのかをプレゼンし会社としてその方向性に承認を得ることが最も難しいプレゼンとなります。ここで頑張って役員からの承認が得られると、あとはとんとん拍子で事が進みます。
商品のコンセプトを間違うとどんなに優れた商品でも売れない商品になります。逆にこのコンセプトが世の中のニーズと合致すると、一気に会社の業績がうなぎ上りにあがることになります。アップル社が良い例ではないでしょうか。
それだけ商品のコンセプトというのは大事なわけです。機械屋の仕事は、こういった検討からはじまり詳細な設計に移ります。そこで商品のコンセプトを決める段階のプレゼンのお話ですが、私の場合は、常に以下の流れに沿って頭を整理していきます。
1.ターゲット層(業界・分野・人)を決める
↓
2.お客様が何に困っているのかを調べる
↓
3.新商品の何を売りにするのかを考える
↓
4.具体的にその商品によってどんなメリットが出るのかを示す
↓
5.そのコンセプトを技術的に実現できるかを調べる
既存機種との違いを比較
↓
6.既存商品と比べ、安くなるのかコストの概算を出す
↓
7.開発日程を提示する
この流れに沿ってアイディアを出していけば、大抵あなたの役員の方たちは必要な情報が揃うため、良ければGOを出してくれます。逆にどれか1つでも情報が欠落していると、最終的なGOは出せないため、ダメ出しが出て、ペンディングになってしまいます。経験の浅い若いエンジニアは特に型を守ろうとせずに我流で話を進めるため、やり直しが多いんですね。
実は上記1,2,3のリサーチ精度がすべてを決定づける要素になるといっても過言ではないと思われます。そのためには自分ひとりで考え込んでもダメで、常に上司の思い描く方向性や会社の向かう方向性、さらに自分自身が思い描く方向性を照らし合わせながら決めていく必要があります。優先度としてはこのような関係になるでしょう。
会社の向かう方向性 > 上司の思い描く方向性 > 自分自身が思い描く方向性
なので、どうしても自分よりも上司、会社の意向を汲み取る努力が必要となります。
サラリーマンですからね。
作業については上記ステップで進めていけば大体網羅できてると思いますが、資料作りについてもポイントがあります。
それは資料を何で作成するのかということですが、よく新人社員にプレゼン資料を作らせると、この流れでワードやエクセルを使う人が出てきます。これは初歩の初歩で間違っていますよね。
文章が多いし、見づらいし、何も伝わってこないし...
なので、発表資料は基本的にパワーポイントを使いましょう!
パワーポイントでは1スライドに載せれる情報量が強制的に少なくなります。それは、プレゼンには文字という情報量を多くする必要がないからです。プレゼン資料を作るときは、イメージやビジョンをを相手に伝えることが目的なので、文章量は多く必要ないのです。
逆に本当に伝えたいことを厳選することで、言葉のチョイスの精度が上がります。少ない文字数で正確に相手に伝えようとすると、その時点で何回もやり直しを繰り返すわけです。
そうやって訓練して、自分が発言する言葉のチョイスも同時に養われ、端的で正確な言葉の使い方が身に付くようになります。
※サンプル画像は、情報源がバレる恐れがあるため掲載を見送りました。あしからず。
プレゼン資料作成!具体的な注意事項
次に、私が気を付けている部分を少し解説します。上記の流れで1つずつチェックしていくのですが、どのようなことを心掛けているのか1つずつ補足を入れます。
1.ターゲット層を決める
例えば、新規顧客かリピーターかとか、同じ業界なのか別の業界なのかとか、新商品を投入させるターゲットを絞ります。
これまでと同じでもいいのですが、エンドユーザーや装置を使う人の顔を常に思い描くことで、仕様に一貫性が生まれ終始ブレることなく進めることができます。
操作性や機械の大きさ、外観などは間違いなくこのターゲットが決まらないとベストな選択ができないことになりますよね。
2.お客様が何に困っているのかを調べる
これまでの経験上、お客様が何に困っているのかわかるのであれば、そちらで構いません。いくつあってもいいですし、些細なことから大きなことまで幅広くあっていいです。
要はそこにニーズやウォンツが隠れているということです。これまでは商品を売って、そのあとにお客様の頂いて次の商品開発に反映させるというスパイラルでしたが、最近ではデータをロギングしてデータ分析によってお客様の使用感を判断するということもされている企業もあります。
お客様の声+操作のログ
操作のログが記録できてそのデータを分析する仕組みを構築できれば、フィードバックさせる時間が圧倒的に短くなり、またお客様の声といったある種不確定要素がログデータといった確定情報になるメリットは計り知れません。単に既存商品のクオリティーを上げるだけの記録ではなく、その記録からお客様が何を求めているのかを探る情報源にもなっているわけですよね。
そういった生の声をいかに拾い上げて改善していくかで、商品の完成度が変わってきます。会社としてのブランド力もアップし、
リピーターも増えることにつながります。
3.新商品の何を売りにするのかを考える
商品の売りというのは、誰に何をが決まってはじめて効果があります。ここがぼやけていると、商品の説明を聞く側としても話がぼやけてしまいピンときません。
そしてできるだけ、短いキーワードで特徴を表すようにします。
例えば、アルファベットと数字を組み合わせてみたり、特徴を表す単語をを当てはめてみたりと、なるべくわかりやすくすると良いでしょう。大手のカタログを見ると参考になるかもしれません。
4.具体的にその商品によってどんなメリットが出るのかを示す
ここがとても重要な部分です。相手に具体的なイメージを持たせる部分になります。
例えば、
・工数が削減される
・生産量が増える
と言われても、ピンきませんが、
・1ヶ月稼働で4日分の工数が削減される
・5日間で10%の生産量がアップする
と言われたほうがより具体的でピンときますよね。
その後で、その根拠を示す計算式やデータを提示すれば良いのです。このように、新商品をお客様が手にすることでどのような未来が待っているのかを具体的でわかりやすく伝える必要があります。
5.そのコンセプトを技術的に実現できるかを調べる
5の技術的に実現できるかどうかは技術者にとってすごく大事なんですが、そこにあまりにも重きを置くと、3の商品の売りが希薄になる場合があります。
多少課題があってもその技術手課題を乗り越えれば、他社とは差別化できて、自社に優位性がもたらされると判断したときは、その課題に全力でトライする覚悟も必要となります。勝算はないとマズいのですが...
3と5は表裏一体という感じになると思います。
3を損なわず、5を確立させることが一番ベストかと思います。
6.既存商品と比べ、安くなるのかコストの概算を出す
ここで良く使われる手法としては、コストは従来通りで機能性は向上したという伝え方ですよね。また、一番わかりやすいのは、○%ダウンという目標設定ですね。
どちらにせよ、コストメリットというのはお客様にとって価値が高いことは明らかです。全く機能性がアップしていなくても、価格が2割ダウンと言えば、それだけでお客様は喜んでくれます。
なので、今回の新商品で価格がどれだけ下がるのか、また、下がる要素をたくさん見つけて盛り込む努力は必要となります。
ここで大事なことは加工業者を見直すということです。これまで付き合いのある業者では、ある程度相場が決まっているため、
なかなかコストダウンには繋がりません。
ですが、新規開拓した業者だと、新しい発見が見つかるかもしれません。同時に数量によるメリットを提示すれば、業者も喜んで応えてくれるでしょう。
7.開発日程を提示する
ここでは具体的にどのような日程で開発を進めていくかを役員へ提示する必要があります。
極端な話、5年計画で進めますといっても誰も認めてくれないでしょう。ほとんどの企業はそこまでの企業としての体力がないため、せいぜい1年スパンか2年スパンが妥当なラインかと思います。
あとは「いつまでに何を」しっかり提示して管理しながら開発を進めますとこちら側の意思を示すと、GOサインが出やすくなるでしょう。
まとめ
以上のように、説得力のあるプレゼン資料を作成するためには、最低7つの項目を練る必要があると思います。
上司または役員の方は自分の頭の中で判断したいため、その判断材料を担当者である我々がわかりやすく説明することが重要です。逆にうまく話が進まない、もしくはペンディングになってしまうにはそれなりの理由があるため、もう一度、7つの項目を見直して何かが抜けていないか、説明不足がないかをしっかり見つめなおす必要があるということです。
「どの方向性で商品を開発するのか」を5W1Hに従って、丁寧に説明すれば、おのずと説得力のあるプレゼン資料になるという事ですのであなたもぜひこの作り方をお試しください。
「メカ設計のツボ」サイト運営者。40代男性で現役の機械設計エンジニア。若い世代のエンジニア育成を目的に情報発信を行っている。1976年生まれ。妻と娘2人の家族持ち。地方の大学院卒業後、工作機械メーカに就職。10年間、機械設計として仕事に従事。工作機械業界から転向し、今でも機械設計に携わっているが、次なるフィールドを探すべくネットショップ(Web関連)の運営に力を入れている。
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