板材を使って部品を構想するとき、あなたはどのような材料選定を行っていますか?特にSS400とSPCCとは同じ板材であり、板厚もよく似たものがありますよね。SUS材であれば、用途もはっきりしていますが、SS400とSPCCとは用途も似ていて、どのような使い分けをすればいいのか迷うときってありませんか?
目次
材質SS400とSPCC(SPHC)の規格寸法とは?
SS400で主に板材の規格寸法は何があるのかご存知でしょうか?一般的な板材の規格寸法は次の通りです。
詳細はpdfを見て頂けるとわかりますが、板厚がt5,t6,t8,t9,t10,t11・・・・・となっています。 規格としては、たくさんありますが、実際に使う頻度が多い板厚や業者が取り揃えている板厚がありますので、すべての板厚が使えない場合もあります。 一方、SPCC(SPHC)の板材の規格寸法は次の通りです。 t1.6,t2.3,t3.2,t4.5,t6.0,t9.0,t12.0,t16.0,t19.0,t22.0
ここで注目したいのは、板厚がどちらもある(または近い)ものです。 例えば、t4.5とt5.0とか、t6.0とか、t9.0などですね。板厚が同じもので違う材質のもの。私は気になりましたね。SS400でもSPCC(SPHC)でも手に入りやすさや価格の安さはほぼ同じ程度だと思います。では、設計者はどうやってこの材質を使い分けるのでしょう?
部品形状に合った使い分け
例えば、あなたが考えている部品がガード類ならば迷わずSPCCやSPHCを使った、いわゆる”板金”を選択するでしょう。ガード類とは、装置の外側に付く部品ですね。車で言えば、ボディに相当しますし、装置で言えば、カバー関係ですね。こんなイメージです。
板金素材の中でも薄板は、プレス機械によって曲げられたり、タレパン機械によって打ち抜かれたりすることで成形されます。薄板(SPCC)の特性上、比較的やわらかく、曲げやすい特徴を持っています。 また、SPCCなどは素材が綺麗ではないので、最終的に加工した部品は塗装がセットになります。 なので、曲げ加工ができる薄板(t3.2とかt4.5ぐらいまで)で、部品を構想するのであれば、SPCCを選択することになります。一方、薄板でも少し厚めの鋼板(t6やt9)となると、SS400を選択します。特に、曲げ加工ではなく、機械加工(切削)が必要な部品には、SS400を選択することになります。 例えば、板材にベアリングをはめ込むといった場合には、t9やt12などの板材に機械加工ではめ合い公差の入った穴加工を施すというような使い方になります。鋼板の製法から見ると、SPCCは冷間圧延鋼板及び鋼帯なので、一般的には薄い板となり、SS400は一般構造用圧延鋼材なので、厚めの板になります。 一見、板厚が同じものでも製法がまったく違いますので、鋼板の特性も異なり、必然的に使い分けもできるということになります。感覚的には、曲げ加工で済む部品にはSPCCを選び、機械加工が必要な場合には、SS400を選ぶという使い分けになります。
さらに、別の角度からの選択基準
少し違った角度からSPCCとSS400の使い分けを見てみましょう。 素材の仕上がり 素材の仕上がりを見比べると、SPCCは表面があまり綺麗ではありません。物によっては多少錆などが残っています。そのため、成形後は塗装がセットになります。
ですが、SS400は比較的表面の仕上がりは綺麗です。そのままでも行けそうですが、錆止め用のメッキ処理を施します。三価クロメートなどが一般的でしょう。 強度 SS400はSPCCよりも強く、S45Cと同じくらいになります。若干SS材は劣ります。引張り強さで比較すると、SS400は、引張り強さが400~510[N/mm^2]の間。S45Cは、生材でも570[N/mm^2]以上はあります。 SS材の強度と同じくらいであることがわかると思います。ちなみに、SPCC材は引張り強さは270[N/mm^2]以上となっています。この点から、強度が必要だなと感じたら、迷わずSS400材を使うことが一般的と言えます。 SPCC材とSS400材の使い分けは以上となります。ご参考になりましたでしょうか?
コメント
コメント一覧 (2件)
内容がシンプルかつ的確で、とてもわかりやすかったです。
他のサイトでは、余計な説明が多く、結局何が選定の決め手なのか曖昧でした。
こういったザックリとした説明を求めていたので、助かります。
こうした説明を見てから、深い知識まで順番に辿りたいと思うタイプなので、
本当に助かりました。ありがとうございます。
あさやさん
わざわざお礼のコメントを頂きありがとうございます。
これからも頑張ります。