【保存版・初心者向け】独学で機械設計エンジニアになりたい人向けのおススメの勉強方法
はじめに
私は地方の大学院を経て、地元企業の工作機械メーカに就職しました。工作機械は数μという”変位基準”の設計が要求された装置です。すなわち、剛性設計が基本となっています。剛性設計をするためには、計算はもちろん、解析も含め提出する設計資料には信憑性の高い裏付けを求められます。
なぜこの形状?
なぜこの材質?
なぜこの板厚?
なぜこのRの大きさ?
なぜこの本数?
など、技術者いつも“なぜなぜ”を自分自身が問いかけ、設計根拠を示す必要があるのです。
その中で、このサイトでは設計根拠を示す数多くの事例を提示することで、機械設計初学者にとって、役に立てるのではないかと思い記事を書いてきました。ただ、設計事例というのは数多く無限にあり、その事例がそのままそっくりあなたに当てはまるものではないですよね。ただ、どんな設計にも共通する”設計思想”というのはブレることはないことにあなたも気づくことになると思います。
この記事では、変位基準の設計を要求される工作機械という分野で培われた”設計思想”を体系的にまとめることで、これから機械設計エンジニアとして一人前になりたいと考える多くの初学者にとって、役に立てるのではないかと思い記事に致しました。この記事を通して、一人でも多くの方に参考になることがありましたら幸いでございます。
この記事の対象者
・将来、機械設計として専門家になりたいが、何から勉強すれば良いのか具体的に知りたい方
・将来、装置開発・設計に関連した業務に携わりたいと検討中の初学者の方
・今現在未経験者だが、機械設計業務に興味があり真剣に取り組みたいと考えている方
・設計ノウハウを学ぶために専門学校への進学を考え中だが、独学での勉強方法を探している方
言葉で表現してしまうと上記の方となりますが、広い意味だと機械設計に興味のある人ならどなたでも対象となります。
対象ではない方
・すでに装置メーカで機械設計業務を遂行している方
・自動車業界で活躍したいと考えている方
・設計に必要な資格取得のための勉強法を探している方
などは対象としておりません
機械設計エンジニアに最低限必要な知識
まずは、機械設計エンジニアに最低限必要な知識を大きく14項目に分けてみました。この14項目は、機械設計として業務を行なうにあたり何一つ欠かすことのできない要素であり、機械屋として1人前になるための全体像を示すものです。「14項目は数が多いな~」と思われる方もいると思いますが、どの項目も100%である必要はありません。どの項目も80%くらいをすべて網羅できていれば、1人前の機械屋として十分なスキルをもって活躍できるはずです。
1.工作機械の知識
2.板金設計の知識
3.切削加工の知識
4.組立の知識
5.ボルト・締結の知識
6.図面表記の知識
7.CADツールの知識
8.日本と世界の素材の知識
9.表面処理の知識
10.熱処理の知識
11.塗装の知識
12.数学の知識
13.測定機器の知識
14.検証・評価方法の知識
1.工作機械の知識
まずは部品を製作する工作機械について学ぼう。この形状の部品はどうやって製作されるのか?普段から疑問に感じてみよう
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参考図書:「トコトンやさしいマシニングセンタの本」
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2.板金設計の知識
板金はどうやって曲げられ、どのような制限があるのか曲げ加工の基礎を学びましょう
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参考図書:「トコトンやさしい板金の本」
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3.切削加工の知識
切削加工とは何か?どんな工作機械で、どのような工程を踏まえ計上が仕上がるのかを学びましょう
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参考図書:「トコトンやさしい切削加工の本」
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こちらの記事もどうぞ → 工作機械のすべてがこれ1冊でわかる
4.組立の知識
組立を知らなければ良い設計はできません。作業姿勢や使う道具類、部品の重さなど現場・現物で学びましょう
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参考図書:「現場の分解・組立マニュアル」
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5.ボルト・締結の知識
ボルトは種類も少しでも多く把握しておいて損はありません。またサイズや本数を決めるための計算知識も必要です
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参考図書:「トコトンやさしいねじの本」
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6.図面表記の知識
図面はJISで表記の仕方が決まっています。1000枚ぐらい自分で書けば最低限のルールは覚えるでしょう
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参考図書:「図面の読み方がやさしくわかる本」
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[gijutsu_binran01] 参考図書:「技術者必携機械設計便覧 改訂版」
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7.CADツールの知識
いくらポンチ絵を描いても最後に必ずCADでデータ化する必要があります。ソフトによって操作は様々ですがたくさん使えれば有利になります。私は今、AutoCAD LTを使っていますので、そちらの参考書を紹介します。
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参考図書:「はじめてのAutoCAD LT 2019 2018 作図と修正がわかる本」
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8.日本と世界の素材の知識
まずは良く使われる素材から覚えていきましょう。部品の形状はこの素材が頭の中にあるからこそ創造出来るのです。ただ、金属材料としてまとめられた参考書は見当たりませんので、記事にまとめました。
・SS400の材料表
・S45Cの材料表
・ステンレスの材料表
・SPCCの材料表
随時追加していきますが、記事更新は不定期になることをご了承ください。また、金属に限らず材料情報で役立つ情報があればご連絡いただけると助かります。
9.表面処理の知識
表面処理は材質によってある程度パターンが決まってきます。処理ごとに持つ役割を理解しましょう
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参考図書:「トコトンやさしい表面処理の本」
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10.熱処理の知識
部品の硬さを決めるためには部品形状と熱処理方法を知る必要があります。熱処理の基礎をしっかり身に付けましょう
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参考図書:「トコトンやさしい熱処理の本」
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11.塗装の知識
塗装には、溶剤塗装や粉体塗装と種類分けできますが、各々メリット・デメリットがあります。実際に図面のテンプレートの中に表面処理を記入する欄がありますので、そちらに色番号を入力するだけですが、デザイン性を考慮した設計には新色の採用や新しい色の採用など機会がありますので、知識として身に付けておきたいです。
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参考図書:「トコトンやさしい塗料の本」
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12.数学の知識
数学の知識というのは、何も高校・大学などで勉強するような難しいものではありません。足す、引く、掛ける、割るぐらいの中学生レベルの計算です。ただ、肝心なことは、式の意味を理解することです。式を見れば、何をどうすれば効果がでるのかといった技術者としての感性を高める目的が重要であり、難しい計算問題を時間をかけて解くことがエンジニアの真の目的ではありません。
技術者がよく使う計算はこちら → 機械設計でよく使う計算方法
13.測定機器の知識
測定機器というのは、必ず何かの評価をしたい場合には必要な情報となります。測定機器を新たに選ぶことも必要ですし、今ある測定器の誤った使い方などをチェックする意味でも知っておいて損はないでしょう。
技術者がよく使う測定機器はこちら(更新中)
14.検証・評価方法の知識
検証の目的は、自分の設計した部位の設計フィードバックとも言えます。設計値通りなのか、設計値以下なのか、以上なのか。
技術者の評価方法はこちら(更新中)
14項目を紹介しましたが、機械屋は日々勉強です。筆者はさらにこんな知識も身につけています。
・金型の知識
・モータの知識
・歯車の知識
・軸受の知識
・材料力学の知識
・機械材料の知識
・溶接の知識
・油圧の知識
・圧延の知識
・鍛造の知識
・レーザの知識
もちろん、時代の流れとともに技術者が学ぶべきことは日々変化していいます。今あなたが持っている知識で満足せずに常に時代にアンテナを張り新しいことに挑戦していくことが、エンジニアとしてあるべき姿ですよね。
機械設計を独学で勉強するおススメの方法
必要な知識と全体像について前節で紹介しましたが、どのようにそれらを学べば良いのでしょうか?1から14を学ぶ上で、以下のような順序で知識を身に付けていくことをおすすめします。
Step1:工作機械の知識、板金設計の知識、切削加工の知識
英単語がわからなければ、英語が話せないのと同じで基本的な専門用語が分からなければ成長率は上がりません。まずは基本的な知識をはじめに押えて起きましょう。ただの座額で終わらず、実際に工場見学に行くなどあるとよりベターです。独学でとなると難しい場合はYoutubeで見れますので、そちらで検索してみると良いと思います
Step2:組立の知識、ボルト・締結の知識
組立を知らなければ良い設計はできないといっても過言ではありません。自分の設計が皆に喜ばれるものなのかを知るためには、まずは自分が組み立てみて、どこが良くてどこが悪いのかを知る経験が大事になってきます。組立でどんな工具を標準で使い、どの工具が特殊なのかを学びましょう。Step2までの土台があれば、Step3からの学習はだいぶラクになります。よく新入社員が技術部へ配属されStep3からスタートするのですが、この場合大抵の人がとんでもない設計をします。
Step3:素材の知識、図面表記の知識、CADツールの知識
↓
:表面処理の知識、熱処理の知識、塗装の知識
↓
:数学の知識
Step3はスケッチで頭の中のイメージを図にする→概略・詳細設計(CAD)→図面を書く(CAD)、といった実践作業の中で身に付けるステップになります。わからない部分を随時調べていきながらちょっとずつ経験値を積み重ねる作業となります。
Step4:測定機器の知識、検証・評価方法の知識
検証・評価というと品保というイメージかもしれませんが、実際に自分が設計しモノが出来上がり、組立を経て装置が稼動する。その後、自分の設計が仕様をクリアしているのかを知ることは、設計と同じくらい大事なことです。また、設計の過程でどちらの方針で設計を進めれば良いのかを決めるための検証もあります。この部分を学ぶことで設計の質がグンと上がることになります。
学習ロードマップ
基本からしっかり学びたい人は、上記Step1から始めてください。経験者であってもStep1から参考書を読むことで新たな発見があります。自分の基礎を確かめるためにも、Step1の学習は重要となります。最低限、下記参考書には目を通しておきましょう。
参考図書:「トコトンやさしい板金の本」
参考図書:「トコトンやさしい切削加工の本」
参考図書:「図面の読み方がやさしくわかる本」
すでに基礎知識を身に付けている人は、組立作業をしっかり身に付けていきましょう。組立作業には、机上では経験できないことがたくさんあります。
1.組立作業の一番の目的は実寸大の大きさを感覚的に覚えること
2.実物大の重さを感じること
3.ネジを締める力加減を覚えること
1が感覚的にわからなければ、縮尺された図面を見ても大きさがピンとこないため装置全体の大きさを把握できません。
2が感覚的にわからなければ、作業者が組立作業で一人で作業できるのか2人作業になるのか想像できません。
3が感覚的にわからなければ、部品を固定する際のねじサイズを感覚的に決めることができません。※最終的には確認が必要です
なので、組立作業はどんなエンジニアもここからスタートするようにしましょう。
プログラミングに興味のある方へ
実はうちの会社でもすでに言われていることなんですが、機械屋、電気屋、ソフト屋というカテゴリーはすでに一昔前の分類になります。最近のエンジニアに求められるものは、ハイブリッドなスキルです。特にソフト屋というのは時代背景からもわかるように、多くの需要があることは明白です。ソフト屋自身、たくさんの言語を使えるスキルが求められる中で、機械屋の存在意義はだんだんと薄れてきています。
機械屋+ソフト屋
機械屋+電機屋
機械屋+解析屋
機械屋+サービスエンジニア
機械屋+検証屋
機械屋+営業(外国語)
などが求められる時代となっているのです。逆に言えば、このハイブリッドなスキルこそ今後、機械屋としての理想形になっていくのだと考えます。私はちなみに「機械屋+AI屋」を目指しています。AIは今後時代の中心となる分野だと予想しているからです。もし、あなたもAIをゼロから学びたいのであれば、自分一人ですべてを学ぶのではなく、時間と知識をお金で買って、マンツーマンでレッスンを受けならば最速でAI構築を身に付けることをおすすめします。このぐらいの自己投資は必要ではないでしょうか。
[Adsense_kiji]まとめ
以上が私が考える「独学で機械設計エンジニアになりたい人向けのおススメの勉強方法」となります。人それぞれエンジニアとして歩んできた道が違いますが、結局頂上は同じとなりますので、山頂までの一つの上り道(選択肢)としてお考え下さい。
本気で機械設計エンジニアを目指している方へ
私の周りで意識高い系の人は、こちらを目指している人が多いです。人気のある、ない関わらず国家試験なので、間違いなく持っていれば強力な武器になることは間違いないでしょう。ちなみに、この資格を持っている人を知っていますが、かなりおじいちゃんで会社の中でも神として崇められています。
[gijutsushi01]
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