圧縮コイルばねの計算とは?バネの設計方法

あなたも機械設計で”ばね”を設計するときがあると思います。市販品を使いますか?それとも計算でばねを設計しますか?市販品を購入すればそれで良いのですが、設計者ならばすべて計算で成り立たせたいものですよね。今回は、圧縮コイルばねの設計を丸裸にしたいと思います。

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目次

ばねの特性とは?線径、有効巻数、自由長など早わかり!

 

バネといえば、圧縮ばね、引っ張りばね、コイルばねなど種類がありますが、それぞれ目的に応じて使い分けが必要となります。圧縮と引っ張りは、力の方向が異なりますよね。
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コイルばねは主に、ばねが捻じられる方向に対して力を受けます。
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まずは、それぞれ用途が異なることを念頭に置きましょう。どの種類のばねにも共通して出てくる用語があります。まずは、それら基本用語について簡単に解説しましょう。

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h5素線の線径とは?
・・・ばね素線の線径です。

 

h5コイル平均径とは?

・・・コイルを巻いた時の中心径です。

 

h5有効巻数とは?

・・・ねじを何回巻いたのかという巻数です。両端は除く

 

h5第1セット長とは?

・・・ばねをスペースの中に組つけた時の長さです。組立時の長さになります。

 

h5第2セット長とは?

・・・セット状態から負荷が加わり縮んだ(伸びた)ときの長さになります。

 

h5荷重Pとは?

・・・ばねに加わる作用力

 

h5自由高さとは?

・・・ばねをフリーにしたときの長さ

 

h5引っ張り強さとは?

・・・ばねに引っ張り荷重を線径の断面積で割った値。
引張強さ(N/mm2)=試験中の最大荷重(N)÷初期断面積(mm2

 

h5横弾性係数とは?
・・・・ばねの材料ごとに異なる弾性係数のこと

 

h5ばね定数とは?
・・・ばねに負荷を加えたときの、荷重を伸びで割った比例定数

 

h5たわみσ1とは?
・・・セット時のたわみ量

 

h5たわみσ2とは?
・・・動作時のたわみ量

 

 

基本的な用語はこんな感じです。これら用語を押さえれば、ばねの設計をする上で問題ないと思います。

 
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圧縮コイルばねの計算方法とは?設計のツボ

 

では、実際にコイルばねの計算方法をご紹介します。ここでは、一例をお伝えします。

 

全体の流れとしては、

①ばねの大きさを決める

②必要な荷重を決める

③素線の線径、コイル平均径、有効巻数、自由長を決める

④繰り返し寿命で許容値内に入っているか確認する

という感じです。

 

 

圧縮ばねはそれ単体として使うのではなく、ばねの先に部品を付けて、何かを保持する目的だったり、反力を利用して何かを押し付けたりする目的が多いと思います。第一は、その”必要な力”をこれから設計するばねの大きさで出さないといけませんよね。

 

その上で、”線径や平均径、自由長”などを決めていきます。

 

そして、最後にその大きさで”繰り返し寿命が許容値内”なのか確認していきます。寿命確認で寿命が足りないという場合も当然でてきます。そういった場合は、線径や有効巻数、コイル平均径などを再度見直して行きます。

 

それでは、次に各計算ステップを見ていきましょう。

 

①ばねの大きさを決める

まずは、ばねが入る大体のスペースを確認します。ここでは、一本あたりのスペースと本数を決めていきます。例えば、ばね1個で30kgの荷重を押す場合もあれば、ばね30個で400kgの荷重を保持する場合もあります。1個あたりの大きさと必要な荷重を決めて行きましょう。

 

最終的にどうしても必要な荷重を出せない場合には、ばねの大きさや個数を変更するなど、臨機応変に対応していきましょう。

 

 

②必要な荷重を決める

必要な荷重とは、設計上必要な荷重となります。ばねの力で何かを保持したいなら、”保持力”が必要な荷重となります。何かをクランプしたいなら、”クランプ力”が必要な荷重となります。

 

工作機械を例にすると、ツールを掴むアーム部分での保持だったり、4/5軸テーブルが停電時に落下しないための保持部だったりします。どちらもかなり強力な保持力が必要で、使用頻度も多いため、寿命計算もシビアな計算となります。

 

 

③素線の線径、コイル平均径、有効巻数、自由長を決める

基本用語で説明したように、ばねの大体の大きさが決まれば、詳細な形状を決めていきます。素線の線径は市場にある規格のものから選んでいきます。細いものから太いものまでありますので、そこから選ぶと良いでしょう。

 

SWP‐A 0.08mm~10.0mm
SWP‐B 0.08mm~8.0mm
SWP‐V 1.0mm~6.0mm

 

 

次にコイル平均径を決めていきます。これは、はじめに決めた”大体の大きさ”のままで計算します。続いて、有効巻数ですが、ここではまだ決められません。ですので、仮に数字を入れて計算します。ただ、最低巻数があり最低3以上取ることをおすすめします。

 

 

次に第1セット長と稼働ストローク、荷重Pを決めます。設計段階でばねのスペースやストローク、荷重が決まりますので、その値を入れて計算します。次に引っ張り強さと横弾性係数を選びます。これらは、ばねの材質によって決まりますので、その値を入力して計算します。

 

例えば、SWP-AやSWP-Bなどのピアノ線(Φ4)を使う場合は、横弾性係数は8000kgf/mm2で引っ張り強さは180kgf/mm2となります。

 

次にセット時のたわみ量を決めます。たわみ量は計算式がありますので、そこから計算していきましょう。これらが決まれば、上限応力係数と下限応力係数が求まります。この値を使って、ねじり応力の疲れ強さ線図にあてはめ、寿命を確認します。

 

 

④繰り返し寿命で許容値内に入っているか確認する

繰り返し寿命の確認では、”ねじり応力の疲れ強さ線図”を用います。先ほどの「上限応力係数と下限応力係数」から線図に当てはめます。繰り返し寿命の目安値ですが、ここでは10^7以上とします。

 

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圧縮コイルばねの計算例

実際の計算例をご紹介します。エクセルにあらかじめ計算式を入力し自動計算させることで、あとあとの計算が楽になりますね。

 

①ばねの大きさを決める

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②必要な荷重を決める

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③素線の線径、コイル平均径、有効巻数、自由長を決める

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④繰り返し寿命で許容値内に入っているか確認する

bane_keisan02

 
いかがでしょうか?この計算は、実績のある計算式で、実際に何度も設計に役立てています。はじめは大変ですが、一度理解してしまえば、誰でも計算できてしまいますね。また、ばねの計算ソフトなどもありますが、自分で一度計算すれば、ソフトの計算もスムーズに理解できると思います。

 
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この記事を書いた人

福井県生まれ。地元工業大学大学院修士課程を卒業。大学卒業後は、工作機械メーカーの開発部に配属になり、10年間、設計、組立、加工、基礎評価、検査について携わり、その経験をもとにしたメカ設計のツボWEBサイトを立ち上げ。

現在は転職し、衛星、医療、産業機械、繊維機械など多くの設計に携わって、機械設計のノウハウを皆様に役立ててもらう情報発信メディアの構築を行っています。

コメント

コメント一覧 (3件)

  • 圧縮バネ設計の解説を拝見させてもらいました。
    バネ設計超初心者です。
    色々とネットでバネ計算方法を調べているのですが、中々難しく苦戦しています。

    もし可能でしたらここで例として公開しているエクセルの圧縮バネ計算データを頂くことはでしますでしょうか?

    厚かましいお願いで恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。

    • ukjp様

      コメントありがとうございます。
      ばね設計の計算エクセルデータがほしいということですが、
      実際に私の使っているエクセルデータをお渡しできればと思いますが、
      それをしてしまい、後々トラブルになっても私自身責任が持てないため、
      そのようなことはしておりません。

      よって、今回もお渡しできないことご了承ください。
      ただ、このようなお問合せは多数ございますので、
      何か対応できないか検討中でございます。
      また、対応が決まり次第、ご連絡致します。

      さらに、当サイトの記事でご紹介できる部分は記事変更を行います。
      よろしくお願い致します。

      • ご連絡ありがとうございます。
        仰っていることはごもっともだと思います。
        自分で設計する以上自分で責任持って計算もしないとですね。
        反省します。

        サイトは非常に分かりやすく、また活用させて頂きます。

        ありがとうごさいました。

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