機械設計のFEM解析とは?解析手法を事例で紹介!

FEM解析と聞いてもピンとこない人もいるかもしれません。有限要素解析と聞いてもピンとない人はこのまま読み進めてください。機械設計技術者が解析によってどんなことを解析し、何を見ているのか、普段は見ることのできない企業の内側をご紹介します。

 

FEM解析とは

一般の人にはあまり馴染みの少ない用語ですが、機械設計分野ではあたりまえの用語となる”FEM解析”です。FEMとは(Finite Element Method)の略で、数値解析手法の一つです。こちらが解析画像です。

有限要素法と呼ばれる手法で、主に構造体の強度解析や固有値解析、振動解析などに利用されます。部品単体だけでなく、バネを入れて装置全体の解析もできます。回転体を持つ装置では、必ず”強度”、”固有値”、”振動”が問題となるため、設計段階で問題がでないよう解析が行われるのです。

 

解析分野は設計と掛け持ちで行う部署もありますが、専門性が高く、今では解析頻度も増して来ているため、専任で担当するスタイルが多くなってきました。また、解析だけでご飯を食べていけるほど、彼らのスキルは設計者並に重宝とされています。解析を必要とする業界も多く、必要な業界にとっては引く手あまたのようです。

 

FEM解析担当者の仕事とは?具体的な内容

解析担当者は一見楽そうに見えて、実はそうではありません。私も過去に解析担当チームに所属していたい経緯がありますので、多少、解析のことはわかります。実際、どういったところが難しいのか説明していきます。

 

【その1】解析結果を現実のものと合わせ込む

解析と聞くと、モデリングができて条件を入れれば計算結果がパッと出てくるといったイメージをお持ちの方もいると思います。解析にもいろいろな種類があり、どの解析にも言えることですが、解析は、「解析結果に信ぴょう性がなければ使い物にならない」ということです。

 

解析というのはそもそも、複雑難解な計算をコンピュータが代わりに処理してくれる作業なので、条件を与えれば、その条件から計算結果をはじき出してくれます。ですが、その結果が現実と合っているのかということは解析自体はわかっていません。人の目で判断し、修正していくものです。

 

そのためには問題となっている現象と解析結果が理屈上うまく結びつくのかという所がとても大事になります。また、この解析結果に応じて対策を考えるわけですから、全く逆の結果を鵜呑みにして、次の行動に移ってしまうと大変な事態を招きます。こういった解析結果の信ぴょう性の裏付けをしっかり紐付けする作業が解析担当者の仕事になります。

 

 

【その2】解析モデルの作成と解析を流す時間との戦い

解析モデルというのは、3次元のモデルにメッシュを切る作業になります。メッシュというのは、簡単に言えばモデル内を細かく分割するといったイメージです。
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このメッシュを切る作業は、モデルが複雑になればなるほどうまく切れず、メッシュが切れないと解析を行うことができません。メッシュが切れる、切れないはある程度経験値が必要となるので、数をこなしてできるようになります。

 

次にメッシュを切ったあと、モデルにバネを張ったり、条件を定義する作業があります。これも素人が簡単にできる作業ではなく、経験を必要とします。バネをどの部分位張るのか?実際の装置を見て厳密に再現していきます。これら作業が終わり、解析を流す段階まできたら、あとは解析実行のボタンを押します。

 

解析にはパソコンのスペックにもよりますが、私が当時担当していたときは、8時間ぐらいはかかっていました。前の日の夜解析を実行して、次の日の朝に終わっている感じです。これだけの時間を要するので、解析が必要なモデルが殺到したときは、いかに段取りよく解析モデルを準備して、プログラムなどで順次解析を実行させるかが鍵となるわけです。

 

また、解析は失敗するときもありますし、プログラムが何らかの原因でうまく走らなかったケースも出てきます。そのときは、悲しんでいる暇もなく、原因を探してすぐに解析を実行させるのです。

 

【その3】すべてのモデルの把握と横展開

こういった解析は新規設計で必要とされる工程となります。また、企業によってニューモデルを開発するサイクルというのは違ってきますが、大体1年に1回の頻度が相場ではないでしょうか。それは、1年に1度は国内や海外で展示会があるからです。企業としては、その展示会で新しいモデルを発表し注目を浴びたいのです。

 

企業には多かれ少なかれラインナップがありますから、1つの機種とは言わず、最低2機種はニューモデルを開発します。

チェック1年に2機種のニューモデル

 

そして、解析にも種類があって、その企業のノウハウで必要最低限の解析の種類を実行しなければなりません。

例えば、

静剛性解析(24h)
固有値解析(8h)
応答振幅解析(4h)
モーダル解析(16h)

チェック1つのモデルに4つの解析

 

そうすると、装置の概略構造が決まった時点で、これら解析を行う必要が出てきます。解析担当者は2つのモデルに対して、良い結果を水平展開していく必要があるのです。

チェック1年に2機種x4つの解析x8~24h

 

これが毎年、行われると過去の解析結果も把握し、良いところ、悪いところを把握しないといけません。これはあくまで私が過去経験した内容となりますので、すべての企業にあてはまるわけではございませんが、企業の実情を知る上で参考になると思います。

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この記事を書いた人

福井県生まれ。地元工業大学大学院修士課程を卒業。大学卒業後は、工作機械メーカーの開発部に配属になり、10年間、設計、組立、加工、基礎評価、検査について携わり、その経験をもとにしたメカ設計のツボWEBサイトを立ち上げ。

現在は転職し、衛星、医療、産業機械、繊維機械など多くの設計に携わって、機械設計のノウハウを皆様に役立ててもらう情報発信メディアの構築を行っています。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • コメント失礼ですが静剛性解析、固有値解析、応答振幅解析、モーダル解析の結果は実際とあってますか?
    工作機械設計の場合、上記のすべての解析をやっていますでしょうか?
    以上、今後ともよろしくお願いいたします。

    • コメントありがとうございます!
      解析結果が実際と合っているのかというご質問ですが、
      結論は、実際と合うように現象と結果を調整していきます。

      解析は実際との合せ込みがその会社の技術力になります。
      1つまたは2つの事例(現象)が解析結果と合うように解析条件を
      変えていくわけです。

      経験上、まずはモーダル解析の条件を合わせこんで、
      その解析モデルからその他の解析の結果を見ていく感じですね。
      合せ込みはかなりしんどい作業です!

      他社は知りませんが、以前の工作機械会社ではすべての解析を行っていました。

      ご質問ありがとうございます。

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